嗅覚と香り
香りのことを話す時、嗅覚のしくみ無くしては
語れません。
嗅覚は五感の中でも特別で、他の感覚とは脳に
伝わるルートが違うのです。
大まかな言い方ですが、
脳には言語や判断などの理性を司る場所と、
本能や情動を司る場所があります。
外からの情報が入ると、他の四つの感覚は最初に
理性を司る場所へ向かいますが、嗅覚は直接、
本能や情動を司る場所へ向かいます。
異臭のする所でとっさに「ここは危険だ」
と本能が察知するような感じです。
例えば冷蔵庫に残った食材があったら、無意識に
蓋を開けて臭いを嗅いでみたりしますよね。
それが嗅覚だとしたら、視覚だと、
賞味期限の記載を探して「捨てなきゃかな?」
と決める、みたいな感じでしょうか。
香りの好みは本当に個人的なもので、
同じ香りでもその時の心身の状態によって、
好き嫌いが変わることもあります。
ある時「ローズマリー精油でよく眠れる。」
と語っていた人の記事を見ました。
一般に、ローズマリー精油は頭の冴える精油
とされています。
また「ティートリー精油で落ち着く。」という
話しを聞いたこともあります。
ティートリーもどちらかと言うと冴えるような、
スーッとした香りです。
精油成分としての特徴や使い方はそれぞれ
ありますが、「いい香りだぁー」の感じ方に
マニュアルは無いと思っています。
二つの事例は私にとって「その人の今の香り」
を考えるきっかけになりました。
その時手に取ったものが必要なもの、
といったこともよく聞きます。
「みんないいって言うけど、ラベンダーが
苦手なんです。」と言われた人に、
「ひょっとして、血圧低いですか?」
とたずねたら、とても低いのだと答えが
返ってきました。
ラベンダーは鎮静成分が多く入っているので身体
が拒否しているのかなと思って聞いてみたのです。
このようなことも、嗅覚のしくみを考えると
腑に落ちる気がします。
仕事も忙しく気の張る立場の方だったので、
ゆっくりした時間も持ってもらいたくて、
その方にはベルガモットから広げた5種類の
ブレンドにしました。
精油の香りには不思議なことが多く、
嗅覚の本能や情動といった言葉がそれを物語って
いるように、私には思えるのです。