【小説】連理の契りを君と知る episode5「花の過去」
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1 誠一郎がいつものように椿月に会うため劇場を訪ねたとき。出演者楽屋などが並ぶ関係者通路一帯はやけに人の出入りが多く、慌しかった。
各所から「あったか?!」「書類庫も全部開けて探して! 衣装室も!」などと、焦りに追い立てられている声がする。
一応は館長に許可を得てここまで来たものの、これだけの取り込み中なのであれば出直したほうがいいだろうか、と思ったのだが。
「誠一郎さん?」
立ち尽くしていた誠一郎に声をかけたのは、劇場