どこか遠い、同じ空の下にいる人に励まされた話


私が好きな漫画家さんは、いつも予告なく、真夜中に突然インスタライブを始める。
アーカイブも残さないため、まさに一期一会。
そんなインスタライブと、最近久しぶりに出会えた日があった。
私と漫画家さんの時間が偶然重なったこの瞬間、運命の巡り合わせはたしかに存在したのだと今なら思う。

10月の下旬頃からだろうか。
私は仕事のことを考えては心を病み、ついに体調にも影響が出始めていた。
毎朝1時間の通勤はその日一日への不安と恐怖で押し潰されそうになり、胸が詰まっているような、吐き気はなくともお腹のあたりが気持ち悪いような、モヤモヤした状態が続く。
仕事内容によっては休憩が取れず、食事も取りにくいため、ゼリーをカバンに常備し歩きながら飲んだり、トイレでバータイプの物をひっそり食べる日もある。
初めは空腹によるエネルギー不足が辛かったが、だんだんとお腹は空かなくなり、塩むすびすらしんどくなった。休みの日に朝昼食べないこともあった。始めは仕事に体が慣れたと周囲にって言っていたが、現実はストレスから食欲不信になっているだけだった。


ストレスの大きな原因は、会社の空気と人間関係にある。
入社してから知ったことだが、20代後半の先輩がすっぽり抜けており、新卒2年目以内の新人が2人、30歳以上のベテランがほとんどという構成。入れ替わりの大変激しい仕事だった。
仕事の教え方も中小企業ならではの教育制度の不十分さなのだろうか、そもそも新人を育てる気が感じられない。
現場で実践させて学ばせる、と言えば聞こえはいいが、崖から突き落とすだけで理論的に教えてくれないことがあまりに多い。知らなければできなくて当然のはずが、こちらが質問すれば自分で考えろと言われ、間違っていると理不尽にきつい言い方をされた。
会社に優しい人が全くいない訳ではないが、直属の上司が大変厳しく、多くの若手が辞める原因になっており、私も今日は何を言われるだろうかと一日中怯えていた。
入社2ヶ月目は一人でいる時もパートナーの前でも泣きながら、仕事がしんどい、上司の人間性が無理と泣いた事も一度や二度ではない。

そして、営業職が初めてなので現実を知らないだけなのかもしれないが、私は入社してから営業の人が職場で昼食を取る姿を、ほぼ見たことがない。
取引先の都合に合わせて動く必要があるとはいえ、入社から3ヶ月経つのに職場で食べる風景を見たことがない、なんてことはあるのだろうか。
車で営業回りに出るとしてもお店で食べる時間を確保するのは難しいし、本社にいても外に食べに出る人はほぼ見ない。結論、移動時間=休憩もしくは、食わず休まずで仕事している可能性は高い。
本社の営業以外の人も、おにぎり片手に仕事をしたりと休憩をまともに取らない人もいる(残業したくないからこうしている、という話を聞かされたが)。

そんなこんなで、以前の職場では肉体→精神の順に死にかけたのが、見事に逆転した。
一度、ホルモンバランスの影響もあってか本当にメンタルがお亡くなりになってしまい、初めて精神科を受診しようとした。しかし即日予約できるはずもなく、今すぐ受けられないならいいや、と諦めてしまった。
その後、時間をかけてメンタルが少し回復したこともあり、病院に頼らなくともなんとかやっていけるだろうと希望を持とうとしたある日、突然体調を崩した。
明日から始まる会社の重要なイベントの準備をし、日中に少しの腹痛がありながらもいつもの事と無視、仕事終わりに愛月ひかるのディナーショー配信に元気をもらい頑張ろうと思っていた日。
突然、耳や顔まわりに熱っぽさを感じた。焦って栄養ドリンクを飲むも、深夜に目覚め熱を測ると39℃。滅多に熱を出さないタイプのため、大変驚いた。そして、繰り返しやって来る腹痛。流石におかしいと、仕事を休み病院に行った。
病名こそ言われなかったが、おそらく胃腸炎、ストレス性ではないかと思っている。幸い2連休の前日だったため、家に引きこもりベットの上で過ごした。熱は1日で下がり、2日目の夜には胃腸も落ち着いた。
なお、休養中に精神科も予約したが、来月なのでまだ受診はできていない。

胃腸の調子も良くなった3日目、私はこっそりと宝塚大劇場を訪れた。
瀬戸かずやのいない花組、その現実を改めて見ると芝居もショーもプロローグで泣いた。残った組子のキラキラした姿に、瀬戸かずやは形を変えて花組の精神に生き続けていると感じた。
ショー「The Fascination!」の中で、宝塚を代表する曲の一つ「心の翼」の場面があった。
この歌詞の中に

生きていることが辛いなんて思いたくはない

というものがある。この曲をフルでしっかりと聞いたのは初めてな気がするが、あまりにも今の自分としっくり来て、思わず涙が溢れた。
時代を超えて愛され残り続ける曲には、人々の変わらぬ心からの願いがあった。

話を戻すが、この突然の体調不良から、私は自分がかなり無理をしていたのではと思うようになった。
仕事がしんどい、という感情は頑張ろうとするから沸くものであり、今まで緊張の糸を張り詰めながらも食らいつこうとしてきた証だ。
生活の為にお金は必要であり、今の仕事になんとか適合しようとしてきたが、本来の私の性格が向いてる物ではないため、毎日きつい言い方で22年生きて構成された私の人格を否定されること、自分を押し殺し続けることにも限界が来ていた。

前置きが長くなってしまったが、こんな状態で仕事に怯えていたある夜に、漫画家さんがインスタライブをやっているのを見つけた。
視聴者が質問してそれに答えてくれるスタイルで、ふと思い立ち現状をコメントした。
「社会人1年目ながら転職し、その2社目すら辞めたくなる自分は社会人に向いていない」
というニュアンスのコメントに対し、漫画家さんは

今の会社があなたに合っていないだけ。合う会社はきっとある。

という言葉をくださった。
自分を仕事に適合させる為に必死だった私にとって、会社が合わないという考えは頭にカケラもなかった。
コメントを拾ってくださったことが嬉しく、お礼も兼ねて追加のコメントもしたが、休むこと食べることは本当に大事だよと、暖かく受け止めてくださった。
仕事において私を肯定してくれる人は職場にいないからこそ、私のことを全く知らない漫画家さんの暖かさが身に染みた。
生活もあるから無責任にすぐに辞めるべきとは言えないけれど、と現実的なことも考えつつ、それでもあなたを励ましたいと答えてくださった優しさにも感動した。

そして、私のコメントを拾ってくださったのは漫画家さんだけではなかった。
同じくインスタライブを見ていた、ある視聴者さん。
もちろん、顔どころかアカウントも知らない、いわゆる赤の他人。
けれどもその方は、パワハラで体調を崩した過去をコメント欄に話してくださり、他に合う会社、働きやすい会社は絶対ある。辞めるのにも勇気がいるけれど踏み出しましょう、と背中を押す言葉を送ってくださったのだ。
その方の過去の体験は今の私に近いものがあり、同じような思いを抱える私を励まそうとしてくださる思いと行動に、どれだけ救われたことか。
社会に出て関わる人が限定され、世界の狭まった私にも、顔を知らずともこんなにも暖かく接してくださる人がいる。
SNSの闇にかつて苦しめられた私が、初めてSNSでの人との出会い、繋がりに光を感じられた。

この出来事以来、私は自分を苦しみから解放するべく、少しずつ動き出した。
私のストレスの大きな要因でもある上司に、今の仕事内容を続けるのは難しいこと、体調が不安定であることを伝えたことで、仕事も一部変更された。異動の希望を出すか辞めるかは決めていないが、ひとまず精神と体調を安定させ、未来を考える余裕を作りたい。

つい先週、大学時代に大変お世話になった先生とお話する機会があり、現状の辛さを少しだけこぼした。(私の現職は先生の属する業界であり、私以上にこの世界のことを長く見ている)
この時も、同じ世界に入ったばかりの私を無理に引き止めようとするのではなく

どうなっても、生きてさえいればいいんだよ

と広い心で受け止めてくださった。

私は自分に逃げることを許しすぎなのかもしれないし、社会を甘く考えすぎなのかもしれない。
それでも、心の声を聞いて従うことは自分を守る為に必要だと思っている。
社会的な正義を他人に押し付けることは、必ずしも正しいとは言えない。
体調不良になって仕事を休むことを望む日々。世の中で物騒なことがあれば、何故罪のない人が巻き込まれるのか、犯人が私の前に現れたら良かったのにと考えてしまう。これが健康な心とはやはり思えない。


長くまとまりがない文章になってしまったが、人の暖かさは直接でもSNS上でも変わらず伝わる物だと知った。
そしてここまで読んでくださった皆様、
休むこと、食べること
を大切に、心も体も健やかにお過ごしください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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