瑠璃さん、海を渡る
だいぶ前の話ですが…。
飲み薬と塗り薬の副作用で、顔がケロイドのようになったことがありました。
初めは、顔に吹き出物がちょっと出ている程度でした。
病院へ行き、薬をもらいましたが、私には合わなかったようです。
顔全体が赤く、炎症をおこしたようになってしまいました。
だんだんひどくなるので、大きな病院へ行きました。
名前を呼ばれて診察室に入ると、ドクターは一瞬私の顔を見ましたが、その後は、パソコンへ向かったまま私を見ることも、症状を見ることもありませんでした。
部屋を出る時に、「治りますか?」と尋ねると、ドクターはパソコンから目を離さず、「治りますよ。」と答えました。
それから更に症状は悪化し、私の顔はケロイド化して、性別も判断できないほど酷くなり、もはや人の顔ではなくなってしまいました。
熱も40度近くまで出て、顔や体の痛みまで出てきてしまいました。
大きな病院へ行っても、この結果です。なす術がありません。
たまたま知人に、皮膚疾患治療の専門的な病院を知っている人がいました。
私は藁にもすがる思いで、その病院へ行くことにしました。
そこは海を渡った、遠い地方の病院でした。
運よく最終便に間に合い、船で夜を過ごすことになりました。
とても、長い夜でした。
エンジン音と、体の痛みと熱で気分が悪くなり、ふらふらしながらデッキに出ました。
夜の海は、真っ黒な底なし沼のようでした。
つづく…。