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【読書感想文】グアテマラの弟

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さて今月の課題図書(といっても参加は自由)は片桐はいりさんの「グアテマラの弟」でした。今月も滑り込み投稿です。

作者の片桐はいりさんは、多くの方がご存知のとおり、個性派女優さん。有名人でありながら、映画館の「もぎり」をされていたりなど、実際にも個性的な方であるようだ。

そんな彼女が、グアテマラという遠い地で生活している弟に会いに行き、人々の暮らしや街の様子を描いた作品ということで、「これは面白そうだ」と今回の課題図書になる前から読んでいた。

ある時から特に大きな理由もなく、全く交流の無くなった姉弟。弟がグアテマラに渡ってからもほぼ音信不通だったが、文明の利器のおかげで、日本にいた時よりも交流が密になり、二度もグアテマラに訪れることになる姉。
交流が密になってゆく時も、グアテマラでも、これといって和解であったり、ものすごく仲良くなったり、というようなエピソードはないところがリアルだ。
ただ、グアテマラで生活する弟を見て、「彼にはここが安寧の地なんだ」と理解するだけ。
解説文はその弟さんが書いている。小学生の頃、薄く書かれた感じをなぞって書くように、姉をなぞってしまうことが窮屈で、離れた土地で過ごすことで自由に自分の動きたいように動けるようになった、というようなことが書かれていて、三人きょうだいの末っ子である私も非常に共感した。意識していなくても姉や兄の影響は受けるものだし、自分が一番上だったら全然違う人生を歩んでいただろうなと思ったことは何度もある。影響を受けた習い事や、クラブ活動を選んできたことで、姉兄がいなかったら本当は自分は何がしたかったんだろう?と疑問に思う。今でもあまり自分のやりたいことがわからないのはそういうことが背景にあるのかもしれない。

グアテマラの人々は、時間に遅れても、物をこわしてしまっても気にしない。人の見た目や、見たことのない様相の人に直接的な言葉を投げかける。親族でもない赤の他人を家に招き入れ、一緒に食事をとる。愛人がいる人も多いが、離婚率は低い。
なんだかものすごく自由だ。

でも、弟さんの妻であるペトラさんの「人生はあまりにも苦いから、せめてコーヒーだけは甘くするのよ」という言葉に、やはり誰にでも窮屈に思うことや、辛いことは山ほどあるのだと考えさせられる。

コロナ禍で、弟さんの学校はどうなったのか、仲良くなった現地の人々の暮らしぶりはどう変化したのか。見ず知らずの人たちでも、エッセイを読むことでまるで知り合いのように心配してしまう。
だけど恐らく弟さんは逞しく商才を発揮しているし、現地の人々も生活に変化はありながら、シエスタをとることは譲らないのだろうと想像するし、そうであってほしいと祈る。

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