「ホリックxxxHOLiC」蜷川実花の世界は演出としてキレが悪い。それが、映画全体の躍動感を弱くしている
三年ぶりの蜷川実花監督作品。彼女の写真に見られる色使い、構図、美意識には、私も一目おくところがあるが、それが動画として動き出すと、イマイチ、キレの良さみたいなものが感じられない。デビュー作からずっと、そのもどかしさをずっと思っていた。そして、彼女が、映画特有の時間軸の使い方や、カットの積み上げの技量をもっと覚えれば、とんでもないイカれた映画ができるのだろうといつも期待はしている。そういう意味では、ストーリーがわかりやすいとか、面白いなんてことはどうでもいいのだ。彼女が創作者として、映画という世界を理解し、その底なし沼を這い上がり、自由な蝶のように映像を紡ぐ日が待ち遠しい。そうなったら、世界から彼女にオファーが来るようになる気がする。
そう、柴咲コウ、神木隆之介、松村北斗、吉岡里帆、彼女たちをショットで捉える画は、なかなか挑発的でいいのだが、セリフを話し出した瞬間にその挑発がスローになる感じなのだ。カット数を増やさずに、演出力で見せようとするのも無理がある。柴咲は、今のドラマ「インビジブル」の方が妖艶に見える。衣装を懲らしても、そこに演出が魂吹き込んでやらないとね。
吉岡里帆のアヤカシの姿は、なかなか今までにない姿だったし、演技でもあった。胸の谷間も露わにこういう演技ができるのは、女性監督の安心感か?吉岡里帆、演出次第でもっと覚醒できそうな感じがする。
主役の神木隆之介は、流石の演技で、ソツのないところを見せるが、最後に柴咲に入れ替わったところがイマイチ。この辺りも、監督、もう少しなんか演出考えても良かったのではないかな。柴咲が蝶として飛び立つところもね。
そして、松村北斗。ここでもなかなかいい男である。でも、監督はそんなに趣味ではないのかなとも感じた。もう少し、艶が出せると思うのだが…。
まあ、役者陣は、それなりに蜷川ワールドを楽しんでいるようで、それは見応えあるのだが、映像が繋がれた時にそれが映画として力を発しきれないというのは、いろんな問題があるのだと思う。
4月1日を何日も繰り返すところも、コントみたいになっちゃってるのはいただけない。その中で神木が狂っていく感じをもっと出さないと。そこは、多分、観客がその画面は二度と見たくないが綺麗だったみたいなものが見たかったりする。
この間見た、フランス映画「TITANE」も女性監督だが、好き嫌いは別にして、昨今では珍しいくらい、あれだけイカれた映画を作れたな!と感嘆するところがあった。とにかく、映画として刺激的である、異次元に観客を引き込む力があるのだ。ああいうような、演出のキレが蜷川監督についたら、ストーリーなどどうでもいい、凄いものができるような気がするのだが、まだまだ先のことなのか、すぐそこに、その到達点はあるのか?
多分、私的に彼女の映画に足りないと思えるのは、「映画を作る哲学」だ。もっと観念的な映像をつないでいくと考えるべきなのではないか?基本的な美的センスには、嫉妬するくらいなものがある。是非とも、映画でもっと上を目指してほしいと思うのである。
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