「ある夜、彼女は明け方を想う」黒島結菜側から見た、その時の情景。彼女の表情に本質が見える
松本花奈監督「明け方の若者たち」のサイドストーリーというか、本編に落とし込めなかった部分を45分にまとめた作品だ。いつの間にかアマプラで配信されていた。映画とネットでこういう風に作品を繋いだりすることもできるのはわかるが、映画館で予告するとか、もう少し広報の仕方はあるのでは?まあ、あくまでも本編が主役なので静かに公開する形なのかもしれない。
そう、本編を見た人でないと、わからない話が多いだろう。そして、こっちを見てから、本編を見ると、全てがネタバレしてしまって、見える風景はかなり違ってくる。
しかし、この作品を見て、黒島結菜の女優としての成長を本当に見た気がした。先に婚約していた若葉竜也と北村匠海に向ける表情は、明らかに違う。これを見たら、黒島が若葉を選ぶのは致し方ないと思えたりする。歳上の夫である、若葉に対する表情の方がすごく色っぽく感じる。その眼差しの未来が見えるような…。
それでいて、若葉が一人海外に行くときの顛末を見れば、黒島が北村匠海といけない関係を続けていた意味も納得できる。そういう意味でこの作品は、あくまでも本編を補完する作品としてできている。そう、黒島の心持ちがいまひとつ本編では見えずらいのだ。
作品として、ここで描かれたことも本編に入れようとしたとも考えられるのだが、どうなのだろうか?私的に考えれば、これらのシーンを無くしたことで本編のあの後味が出たという感じはする。そう、北村の主観として映画を紡いだことで、青春の苦い後味が感じられるということなのだろう。
考えれば、青春映画は、三人称で捉えても、なかなか個々の気持ちにはシンクロしにくいというところはある。ある意味、若者にとって残酷なことは残酷なまでに描くことで、よくわからない青春のまどろみが見えてくるというような…。
そういう意味で、本編とこの作品を見て、青春映画の苦い後味を思い出させられたりもした。まあ、こういう二本立ての制作はデジタルだからできる技であるが、蛇足だと考える人もいるだろう。難しいところだが、私的には黒島結菜がなぜ最後に夫の元に行ったかは理解できたという点で面白かった。両方のラストは同じクジラ公園。思い出の場所が愛しいのは、どこか後ろ髪も引かれているということでしょうね…。言葉にできないところもちゃんと描けている作品ということなのだろう。
とにかく、この2本での黒島結菜の表情はたまらなく良い。朝ドラ終わったら、是非、松本監督とのコンビでもう一本作ってほしい気がする。
こういう、色気のある表情を見ると、本当に映画って素敵だよなと思うのですよ!
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