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「劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~』」パニック映画として完成度は高い。テレビ繋がりでなくこういう作品が作られないかと思うのですが・・。

流れで初日に見にいったが、予想以上の出来の作品だった。全編128分、ほぼ息もつけず見入るという感じではあった。今はVFXというかCGを使える分、簡単に旅客機を燃やしたり、ランドマークタワーに火をつけたりすることができる。この映画の予告を見たときに「タワーリングインフェルノ」を思い出したが、あの時はいろんな大きさのミニチュアを作った話があったから、本当に映画作りが変わったことがわかる。そして、日本映画であってもこれだけ臨場感があるものが作れるということは大きい。ということは、やはり、優れたストーリーを作り、演出できるものがいれば、世界的なヒットにつながるものは作れるということである。

この後、ネタバレ多分にあり、見る予定の人は後で呼んでください。面白い映画なので、そうした方がいいです。

話はテレビの終了時の二年後。この間のスペシャルドラマの一年半後の話。鈴木亮平は、仲里依紗と結婚して仲のお腹には子供ができている。そして、MERには、ジェシー演じる研修医が新たな顔として入ってきている。

そんな中で、冒頭の20分くらいは、旅客機の火災事故の現場で救助活動を続けるMERの姿。このミッションも、今までで一番危険な現場という感じだ。機内でみんなを治療して逃した後でCAが倒れる。旅客機は爆発寸前。MERカーの中で手術を行うも、車を動かしながら。そして、車もタイヤを障害物に取られて動けなるみたいな、この映画導入部でMERの異次元な現場に観客を導いていく脚本はなかなか強烈。

そして、政治的な話や人事の話、横浜のMERの話があって、本筋のランドマークの事故に移る。この事故の見せ方も、最初に犯人が火をつけるところが出てくるので、いろいろ考えずに観客はパニック映画の中に没入していける感じ。しかし、ここで、仲と菜々緒をランドマークの上に上げておくというのが設定としては上手いやり方だ。

だが、この火災の原因になる放火犯がかなりの多くの数のゴミかごに引火性の液体を置いていた話だが、一人で誰にも見られずに仕掛けたというのは設定としてかなり無理がある。まあ、映画の見せどころがそこでないし、犯人がどうしてそれをやったなんていう動機も関係ない世界なので、そこに文句を言う人はいるだろう。こういう犯罪ドラマにはそれが必要であるのかもしれないが、昨今の日本の犯罪はこういう意味なき殺人が多いのも事実で、その動機をスルーされても平気でいられる自分が怖いというところもある。

そして、延々と続く消化と救援作業は、実際に同様のことがあったら、こんな医療ができる状況はないだろうという場面が続く。リアルな現場なら、ここで横浜MERの杏たちがやっていることが限界だろう。そう、横浜MERを出す意味はそこにあるのだろう。いかにTOKYOMERが異質なのか?ということと。彼らがいかにヒーローなのか?ということ。こんな火事の現場で平気で簡易にオペをしてしまう姿が実際あるのかないのか知らないが、現代の医療機器を駆使すればこういうことができるはずだというシミュレーションはしているのだろう。これで、観ている方に何も違和感がない時代ではある。

そして、パニック映画でのエキストラの使い方などもなかなか的確で、皆が我先にと非常階段から降りようとするシーンで、修学旅行生がMERを手伝おうとするのは、すごく日本的なシーンに見られた。これを観て、海外の人はどう思うだろうか?まあ、ドラマ続きの映画なので海外公開にはなりにくいとは思うが・・・。そう、そこは勿体無い映画である。これ、ドラマなど関係なしに、ただ、ランドマークタワーの火災映画だったら結構世界マーケットで売れるのではないだろうか?と思うところがある。だが、そうすると、MERの紹介みたいなものをする必要もあり、無駄なシーンが増えますものね。そういう意味ではドラマのスピンオフ的なものはあくまでもテレビが存在しての映画だったりするのですよね・・。テレビがあったから、お金が出てこれが作れる流れというのが、映画ファンとしてはもどかしい。

しかし、火事の中で最後に鈴木亮平と妊婦の仲里依紗が閉じ込められる状況の中、賀来賢人が駆けつける場面は、まさにヒーローもののようで、「よく登ってこられたね」という感じだが、映画だからそれでいいのだろう。その前にジェシーが薬を持って登ってきた時もそう思ったが、そこが見せどころの映画ではあった。「いつくるんだ!」という気持ちの連続技ということ。

で、最後は降りてからMERカーの中での手術なのだが、ここで、仲里依紗が心拍停止になってから、脈が戻るまでの時間が異様に長い。この辺り、演出家はかなり引き伸ばしている感じ。映画だからという思いもあるのだろうが、まあ、生まれた子供が蘇生するのを見せた後に彼女を回復させるのは感動を二倍にする感じでしたね。

この作品の監督、松木彩は、TBS「日曜劇場」を多く手がけている女性だが、なかなか硬質なアクションを見事に構成しながらも、結婚や鈴木の仕事優先の心象部分などもうまく描いている。もちろん、黒岩勉の脚本が面白いのもあるが・・。ただ、やはりテレビ出身の人らしく、人の対話シーンのような部分がどうしても人のアップ中心になるのは、映画の画面で見るともどかしい感じがする。それでも、昔のテレビ出の監督からするとクールな演出ができている気がする。是非、テレビと関係ないオリジナルの映画を撮っていただきたい人だと思います。

そして、結果的にはMERがミッションを終えて、管理部署が「死亡0」というまでがこの作品な訳で、そこで石田ゆり子のガッツポーズがあり、政府関係者のうかない顔もある。その定型が映画としてもうまくまとまっているのが、いいのか悪いのか?という感じはあった。

しかし、ダメな政治家役の徳重聡さん、いやらしさがうまく出ていましたが、そこを最後に強く糾弾する感じの渡辺真起子官房長官、ワンシーンなのに迫力ありましたね。こういう人が日本の中枢に欲しい気はしますね!

とにかくも、エンタメとして存分に楽しめました。ゴールデンウィークに見るには良き映画だと思いますよ!


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