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「エルヴィス」アメリカの象徴を表舞台にフューチャーして描いて欲しかった気がするのは私だけ?

エルヴィス・プレスリーが1950年代にデビューしてから、1977年に42歳で亡くなるまでのストーリー。彼が亡くなって、今年で45年。そんなに経ったのかと思うのと、だからこそ、この映画ができたのだなと思ったりした。と考えると、若者が結構見にきていたが、ほとんど彼のイメージがない人が多いのではないか。

私とて、どちらかといえばビートルズから洋楽を聴いてるような世代だから、その前のロカビリーなどと一緒に一昔前のものという印象がある。だから、彼がなぜにアメリカでもてはやされたか?ということもよく理解してなかった。そういう意味では、エルヴィス・プレスリーの入門的な映画を見たかったところはある。

だが、実際は、なかなか不思議な映画だった。特に、最初の方のデビューから、RCAと契約してアメリカのスターになるまでのシーンは、細かいカットの積み重ねで、ドラマ自体を拒否するかのような映画。そう、長いプロモーションビデを見せられているようにも感じた。ある意味、新しい。デジタル編集だから可能な世界だ。ただ、楽曲をゆっくり聞けない感じは少しストレスになった。

とはいえ、主演、オースティン・バトラーは、見事にこの大役を果たしている。本当に、こういうキャスティングは日本映画にはできない芸当だ。すぐに、彼が私の知ってるエルヴィスと同化していますものね。そして、体を動かすことで人気を得ていったということの表現方法もうまい。そして、白人なのに黒人音楽を好んで歌ったことで、新しいヒーローになった経緯なども、わかりやすく描いている。だが、先にも書いたように、もう少しゆっくりこのあたりを見たかった気もする。今ひとつ、薄味なのだ。

つまりは、この映画はマネージャーのトム・ハンクス演じるトム・パーカー大佐に報酬が搾取され、彼が市民権を持っていなかったために自由に興行ができなかったというところにこの映画はフォーカスを当ててるため、彼と出会うまではダイジェスト的な作りだというところなのだ。

だから、テレビのクリスマス番組で新しい試みをするところや、ラスベガスのホテルでショーを開催するところなどは、少しドラマを濃厚に描いている。観る方からすると、この辺りのバランスがイマイチという難点はある。

だが、興行を前に出すことで、最後の方は、キング牧師、ケネディ上院議員、シャロン・テート事件などを組み込ませながら、そこに対するエルヴィスの恐怖感みたいなものもうまく表現してたりもする。特に、日本で似たようなことがあった2日後に見たので印象的だった。

結局は、ドラッグと同じようにマネージメントを麻薬のような人間に頼んだことが彼を早い死に追い込んだということも言えるのだろうが、その辺りの本質がもう一つうまく描けていない。「ボヘミアン・ラプソディー」と比べる人も多いようだが、ちょっとニュアンスが違う捉え方であり、最後に、そのような爽快感みたいなものはない。そう、ボロボロになって朽ちていくのだが、それは、時代と自分自身に勝てなかったみたいなところがあり、その辺が、日本人の思ってるエルヴィス像とはシンクロしにくい気がした。(それ自体がもう一つよくわからないが)

まあ、熱狂的なあの時代にファンになった人にしかわからない世界みたいなものがあるのでしょうな?私的には、この映画を観たあとに、エルヴィスの歌を聴きたいという感じではなかったんですよ。

だから、タイトルの煌びやかさが、虚しく見えてくる感じだったりしました。男が腰振って踊りながら歌ったことに興奮する過程が読み取れないと、エルヴィスは理解できないということなのでしょうか?


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