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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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#岸井ゆきの

「ケイコ 目を澄まして」16mmフィルムに焼き付けられた画と空気感とそこから広がる世界への疑念。

この映画は16mmフィルムで撮られたそうだ。それなりに画質は粗いが、昨今のデジタル技術は、それを違和感なく映画館のスクリーンに映し出す。映画がフィルムのみで上映されていた時代は、16mmを35mmにブローアップして上映することはあったが、その画質は映画館で見るとやはり安っぽく映ったし、観ていて疲れた。まあ、今、16mmで撮ることに意味があるかどうかは置いておいて、その映像から醸し出す空気感はなかなか硬質であり、昭和の臭いのするものに仕上がっていた。 だいたいボクシングを主題

「神は見返りを求める」現代のデタラメな社会の中に神は存在するのか?と鋭く背中を突き刺す傑作!

昨年の「空白」で私を異次元に引き込んだ吉田圭輔監督。その新作が今かかっていると昨日気付いて観に行く。だいたい、主演が、ムロツヨシと岸井ゆきのって、気になって仕方なかったのだ。結論からいうと、またまた傑作だった。昨日観た「ベイビー・ブローカー」なんかに比べても、社会風刺のパワーが格段に強烈だった。そう、そう、今の日本、こういう裏切り、悪口、罵り合いみたいのことが、リアルでも、ここにあるようにネットでも溢れかえっている。そんな、世の中の空気感を見事に映像で繋いで、観客に「帰るとき

「やがて海へと届く」友人、家族、亡くなった人に声を届けようとする心の映像化

原作がある映画だが、何も情報を入れないで観たと言っていい。岸井ゆきのと浜辺美波の共演というのだけで観に行った。岸井は現在、30歳。浜辺は21歳。この二人が同じ歳を演じる。時に、浜辺の方がお姉さんっぽい雰囲気を出すこともある。なかなか面白いマリアージュといった感じだった。この二人、テレビドラマ「私たちはどうかしている」でも共演していた。この時も、同じ男を伴侶に狙う役ということで同年代の役であった。岸井が背も小さく、童顔なのでこういう役が回ってくるのだろう。でも、岸井は年の功とい