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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年5月の記事一覧

「ハケンアニメ!」吉岡里帆を中心に役者4人の演技で締まった映画になった!

最近は、若い女優さんたちの演技に唸らされる。この間、「流浪の月」で広瀬すずの代表作ができたと思ったが、今回は吉岡里帆が彼女自身最高の演技をしていたと感じた。国立大を出て公務員をやっていた女性がアニメ会社に入り、その七年後に監督として、アニメ界の巨匠とテレビの同じ時間でハケンを争うという話である。自分がアニメを見るきっかけになった監督と争う。その、震えと、高揚感、そして監督として歩む中でさまざまな成長を果たす姿を、まさに全身で演じていた感じ。ラストの彼女の気持ちが映像の向こうか

「大河への道」題材的には映画向きではない。それを大河ドラマにするのも大変かと…。

立川志の輔の落語を原作にした映画である。企画が中井貴一になっている。ある意味、それは意気込みを感じさせる。題材は、伊能忠敬。確かに彼を主役に大河ドラマを的な話は何度か聞いたことがある。ここでは、伊能が自分で地図を仕上げてないから、ドラマにならないということが発端で、彼が死んでから地図が出来上がるまでを描くという、ある意味サイドストーリーだ。 まあ、それを時代劇にするだけでは面白くないので、大河ドラマを作ろうとする地方の自治体の動きと一緒に描くことで、なんとか面白いものにしよ

「ツユクサ」小林聡美、平岩紙、江口のりこの3人が同じシーンの中にいるというだけで主張してくる映画

前作「閉鎖病棟」も好きな作品だった、平山秀幸監督作品ということで、見たかったのだが、なかなか時間が合わず、今日になった。こういうあまりお金のかかっていない、スターも出ていない、オリジナル脚本をしっかり仕上げてしまう監督の力量は堪能できたし、最近は、こういう身近な題材のオリジナル作品って久しぶりに見るなという感慨深さもあった。小林聡美主演ということで「かもめ食堂」のような、荻上直子監督作品のようなものも想像したが、そんな、変化球的なものではなく、正攻法の熟年恋愛映画としてしっか

「シン・ウルトラマン」半世紀以上に渡り怪獣と戦ってきた男の心根、そしてそれを見守ってきたファンの心根を確認するための作品。

総監修、庵野秀明は、以前にも書いたが、私と同じ歳だ。つまり、ものごころついてすぐに、テレビで「ウルトラQ」「ウルトラマン」に出会う。そう、「ウルトラマン」が始まったのは、私が小学校に入って、初めての夏休みを迎える前だ。「ウルトラQ」は、毎週新しい怪獣が出るという刺激の強さを今も覚えているし、周囲も、みんな怪獣に夢中だった。そして、「ウルトラマン」の登場!この、宇宙人は、子供たちの心を掴み、その遺伝子は、多くの同じ世代にこびりついていると言っていい。これが、第一次怪獣ブームだ。

「流浪の月」静かに重く、映像に乗せて、愛の本質の匂いを感じさせる秀作

今年見た、日本映画の中では、一番手応えがあった。そう、こういうのが映画っていうんだよっと、最初から、ずーっと感じながらラストまで150分、堪能したと言っていい。こういう時間を過ごせるから、映画館で映画を見ることをやめられないとも言える。 主演の3人の演技が、今までの彼らの演技を大きく飛び越えるように出色であった。もちろん、それは、監督脚本、李相日、撮影監督、ホン・ギョンピョというスタッフによる力がかなり大きいと思う。観客は、最初からズーッと演ずる役者たちの深い心の中に入って

「ホリックxxxHOLiC」蜷川実花の世界は演出としてキレが悪い。それが、映画全体の躍動感を弱くしている

三年ぶりの蜷川実花監督作品。彼女の写真に見られる色使い、構図、美意識には、私も一目おくところがあるが、それが動画として動き出すと、イマイチ、キレの良さみたいなものが感じられない。デビュー作からずっと、そのもどかしさをずっと思っていた。そして、彼女が、映画特有の時間軸の使い方や、カットの積み上げの技量をもっと覚えれば、とんでもないイカれた映画ができるのだろうといつも期待はしている。そういう意味では、ストーリーがわかりやすいとか、面白いなんてことはどうでもいいのだ。彼女が創作者と

「劇場版ラジエーション・ハウス」成長する女性二人、それを熱く応援する清々しさ

テレビシリーズがそれなりに気に入っていたので、劇場版も、それなりに楽しみだった。これでシリーズ終了との話もあるが、今回のラストを見ると、更にこの先を描いてもいいという終わらせ方。でも、熱い◯◯で終わってるのは良かったです。まあ、この面子を全て揃えないと、このドラマは成立しない感じだから、この先を作るのもなかなか大変なのでしょうが、機会あればまた再会したい皆さんでした。 で、映画の話。ネットの感想を見ると、ほとんど「面白かった」という感想。まあ、ドラマのファンが見にいってるの