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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年2月の記事一覧

「ドリームプラン」ウィリアムス姉妹に対しての思い入れみたいなのがないと感動篇にはなりにくい?

皆さんご存知のアメリカのテニスプレイヤー、ウィリアムス姉妹のプロデビューまでのサクセスストーリーである。私は、テニスに関してはやるのも見るのもほぼ興味ないのだが、ウィリアムス姉妹の存在は知っている。だが、彼女たちは日本では人気にはなりにくかったと言うのが多くの意見ではないか?日本では、やはり人気の点でも黒人はなかなか難しいところはある。それは、大坂なおみに対しても同じようなものを感じる。日本における差別問題は確実にあるわけで、それは見えにくいから厄介だったりもする。まあ、テニ

「ザ・ユナイテッド・ステイツVS.ビリーホリディ」この題名に見える感じの緊張感がもっと欲しい気がした。

平日の午後の劇場は、ほぼシニアが10人程度。ビリー・ホリディという歌手の名前で若者は呼ばれてこないということだろう。今から半世紀前の1972年に同じ題材でダイアナ・ロス主演で「ビリーホリディ物語/奇妙な果実」という映画があった。私は観ていないが、テレビで結構宣伝していたから覚えているし、ビリー・ホリディもダイアナ・ロスもその時に覚えた。そのころは、まだビリー・ホリディが亡くなって13年だから、そのセンセーショナルな人生は多くの人に受け入れられたとは思う。だが、時は過ぎ、彼女が

「ちょっと思い出しただけ」ラスト、タイトルが出るところで、映画が光る感じになるのは好き!

伊藤沙莉、池松壮亮の主演ということで、映画として成立している作品だ。監督、松井大悟は、昨年公開の「くれなずめ」もそうだが、過去にこだわるような映画が好きなようだ。そういう意味では未来が見たいだけの私としては、そういう映画はそれほどそそられる作品ではない。まあ、過去の出来事にけじめをつける的な感じが好きなのだろうが、他人の過去ってどうでもいいと思っているのが私だったりするのですよ。 とはいえ、特に大きな物語も作らずに115分、なんか、大きなドラマも起こらずに、二人の現在と過去

「ウェスト・サイド・ストーリー」スピルバーグは、映画はこういうものだと言いたいのか?久々に素晴らしきシネマ体験をしたと言える映画

それなりに期待していたのだが、期待以上だった。公開2日目、夕刻の東京で一番大きなスクリーンのIMAXは、6割くらいの入り。感染が広がってるせいもあるかもしれないが、(それよりも公開スクリーンの多さの割に見たい人が少ないと言うことなのかもしれない)この映画にこの入りは寂しい。だが、終わった後に拍手する人がいて、私も続いた。そう、拍手したい映画だった。名作のリメイク。まあ、普通は最初の作品を越えることは難しい。名作として、皆の脳裏に明確に刻み込まれているからだ。 だが、それをス

「355」アクション映画の歴史は女性が変えていくのか?

単純に面白かった。イギリス制作のスパイ映画。ほぼノンストップアクションの122分。アメリカ、コロンビア、中国、ドイツ、イギリスの女スパイたちが地球に危機を及ぼすデバイスを追って動き出す。最初敵だったものが、途中で一致団結していく姿も面白い。 まずは、標的になるデバイスの紹介から始まる。地球上のすべてのネットを自由自在に扱える代物。飛んでいる飛行機を簡単に爆破し、街ごと停電にするということも簡単に。もはや、地球の王になれる代物。こういうデバイスを作ろうとすること自体が狂気だが

「クレッシェンド 音楽の架け橋」対立するものたちが、音楽でクレッシェンドしていく物語

ラストシーン、題名にあるクレッシェンドの最高の大きさに心が重なった感じを表現しているのだろう。曲はラヴェルの「ボレロ」だんだん大きくなっていく曲である。なかなか綺麗な幕の締め方だが、それぞれの対立は決して無くなってはいない。だが、彼らは考えることを知り、音楽でなら共鳴できることも理解できてきた。世界が完全に差別意識のない状況になるのは、とても無理なことだと私は思う。私自身も身体の中に内在するいろんな差別意識の種を持っていることは確かだ。だが、その種を芽生えさせている人たちには

「前科者」演出と役者の演技が見事に嵌って、重厚にテーマを紡ぐ。そこにあるのはリアルな日本の姿

SNSで好評な意見を見て、ほぼ、情報を入れずに見た。思う以上にしっかりとした良い映画だった。役者たちの演技がとても印象的。全ての演者が有機的に映像の中に存在する。そして、日本という国のなかなか成長できない部分を見せつけられた感じもした。 そして、情報をほとんど入れないでみたせいで、この原作がコミックであるということも知らなかった。コミック原作でこういう話ができるんだと思うと、本当に日本のコミックの内容の幅の広さというか、世界の広さはすごいなとも思うし、これだけ映画として作り