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2022年新作映画レビュー

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2022年に見た新作映画のレビューです。
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2022年1月の記事一覧

「真夜中乙女戦争」この世の終末に孤独な池田イライザはもっと美しくあるべきでは?

池田イライザが出ているので観に行ったと言っていい。「真夜中乙女戦争」という題名はなかなかそそる。同名小説の映画化。東京破壊という狂気の題材をどう映像化するかというところが映画の見どころ?ラストに流れる主題歌はビリー・アイリッシュ。こういうところにお金を使うのは悪いとは言わない。まあ、終末観みたいな雰囲気を出すには良い歌声だし。私も、瞑想をするように彼女の音に声に聞き入っている時がよくある。そして、この話に表現されるような世の中に生きる無力感見たいなものにはぴったりの主題歌では

「名付けようのない踊り」生きるということ、存在を認識するということは、踊ることなのかもしれない

田中泯のダンサーとしての日常を追った犬童一心監督のドキュメントである。彼の役者としての姿は、そのデビューであった「たそがれ清兵衛」以外は出てこないし、そこにフォーカスを当てることもない。あくまでもダンサー田中泯の存在を知らしめるべく、この映画は成り立っている。私も、田中さんがそういう人だとは知っていたが、彼のその本業としての姿をじっくりと見るのは初めてであった。 なんなんだろう、田中泯自身を見ていても、なんかよくわからないが凄いという印象なのだが、それに引きずられるように見

「クライ・マッチョ」91歳の監督&主演という神技が、年の功になっている凄み

クリント・イーストウッド。今年の5月31日で92歳である。この映画は昨年91歳の時の作品で監督業50周年記念映画ということだ。キャリアは言うに及ばず、この歳になって監督だけでなく主演もこなすマッチョが彼である。その存在感だけで魅せる凄みはなかなか。途中、馬に乗り振り回されるところは流石にスタントだとは思うが、ちゃんと彼が馬をいなしているように見える。それがスターだ。 (この後ネタバレしますので、観る予定の人はご注意) ロデオの落馬で馬に乗らなくなり落ちぶれた男が、友人の子供

「コーダ あいのうた」ラストの歌に全てが詰まっていて、未来を見つめながら現在の幸せに感謝する話

(ネタバレが多く書いてあります。見る予定の方はお気をつけ下さい) 最後に主人公が手話を入れて家族に向かって歌うジョニ・ミッチェル「青春の光と影」の美しい声で、この映画は全て浄化される。それは、その後に彼女が彼氏と飛び込む、蒼い海の如く清い感じと同質だ。映画全体は、聾唖者の家族を少しコメディタッチで追うが、最後には彼らが神に導かれるような感じでエンドマーク。サンダンス映画祭4冠と聞いて、もう少し重いものを想像していたが、現在の世界が望むものはそういうシリアスな未来ではなく、カジ

「ハウス・オブ・グッチ」経営ができない家族の行く末としては珍しくない話

簡単に言えば「グッチの家の話」ということである。家族経営がうまくいかず、ブランドを全て人手に明け渡すまでのおバカな話である。だから、映画自体に爽快感みたいなものは全くない。なんか、昔の大映映画にこういう話がよくあった気がする。レディ・ガガの役を若尾文子にして増村保造に撮らせたら結構面白くできそうな題材だ。とは言っても、私自身がそういう話はあまり好みではない。 映画自体は、さすがリドリー・スコット監督作品ということで、まとまりがある。とはいえ、159分はなかなか長い。大体19

「コンフィデンスマンJP英雄編」誰がサカナなのか?子猫ちゃんなのか?このくらいスリリングな世界に住みたかったりもする。

映画三作目にして全く緩みなし。前作の後に出演者が亡くなったりして、テンション下がってるかと思いきや、コンフィデンスマンたちはかなりアクティブにミッション完了ということだった。観る前にはもう、このシリーズ、最後なのかと思ったりもしたが、スタッフ側としてはまだまだ作る気満々に思えたし、そうあって欲しいと思う。シリーズものが皆無に近い日本映画にあって、それなりに力尽きるまでおサカナを追いかけて欲しいものだ。 この間、ネットで長澤まさみがこんな映画に出てることがよくないと書いていた

「香川1区」政治とは?選挙とは?この世界も汗をかいた方が勝ちにならねばいけないのだ!

「決戦は日曜日」の感想を書いたところで、宣言した通りにこの映画を観る。この前作「なぜ君は総理大臣になれないか」は見ていないが、この作品を見れば、想像がつく。まあ、熱い男を追えば、熱い映画ができるということだろう。そう考えれば、相手候補の平井卓也氏に「PR映画を作って宣伝していてずるい」と言わせるような映画だということだ。ある意味、この発言で、(というか、映画自体を見ていないと彼は最初に言っているのに、PR映画かどうかはわからないはず)彼が追い詰められていたこともわかる。 し

「決戦は日曜日」今の日本の選挙というものは、おおよそこんなものだろうと納得させるコメディ

予告をみて、見たくなった一本。実際はそれ以上に面白く、皮肉も潜めながら、今の日本の政治、選挙というものを明確に描いている感じ。そして、宮沢りえのコメディ演技に全て持っていかれてる感じは圧巻。色々、政治にモヤモヤが止まらない人も見た方がいい。結論は、皆が選挙に行かないと何も変わらないよということ。行かない人の一票は、もう、数にすら入れてもらってないのだ。そう、選挙に行かない人は、日本では完全に透明人間だ。そう、「選挙に行こう!」という啓蒙をしたいなら、この映画を見せればいいので

「君といた108日」ある意味、古典的な話だが、聖い神の表現に美しさは感じる

大学で巡り合った彼女が、がんの闘病の末なくなって行くという、昔からよくある闘病と儚い命の物語だ。だから、「なんだ」というような批評をする人も多いだろう。かと思えば、「泣いてしまったよ」という人もいるかもしれない。なぜに、この映画を今作るの?という疑問がある人も多いかもしれない。 でも、まずは、この話はジェレミー・キャンプという歌手の実話である。そう、こういう経験のある人は、こういう物語の数ほどあるのかもしれないが、その末に、亡くなった彼女の存在がより大きくなったという感じの

「明け方の若者たち」黒島結菜に、更なる成長を見たということで満足だった

正月2日目は、この映画を観る。松本花奈監督初長編とのこと。ある意味、1960年代頃にもよくあった、明日に向かう若者たちの苦悩とときめく青春像というか、そこに今風のエッセンスも入れながら、それなりには楽しめた。ただ、この題材に116分の時間は長い。特に、恋愛話に決着がついてから、そう、黒島結菜が消えてからが長すぎる感じではある。そのせいで、色々結末を勘繰ったが、特に捻りはなかった感じ。(これ以降、なるべく避けて書きますが、多分、映画をこれから観る予定の人にはネタバレになると思う

「ヴォイス・オブ・ラブ」ディーバの人生の苦難の部分が、今ひとつ感動にはつながらないのが辛い

最近は、元日は映画館に行くのが恒例になっている。まずは、映画ぞめというところだ。ということで作品を選ぶのだが、今年は、ハリウッドのものではなく、カナダとフランスの合作になる、この映画を選んだ。セリーヌ・ディオンの半生を綴る伝記映画である。ヴァレリー・ルメルシエの監督、脚本、主演というほぼ一人舞台の作品だ。 そういう意味では、ハリウッドで作られる伝記映画ほど、派手な映画ではない。ということで、最初の方は少し眠気が襲ってきた。まあ、映画館の暖房のせいもありますが…。 14人兄