パリの冬と焼き栗
今日は朝から冷たい雨が降って、その後雨があがっても、寒さはそのままの曇りの一日でした。
曇り空の下を歩いていると、いつもは寂しい気持ちになるのに、今日はなぜか「冬のパリの街を歩いてるみたい」っていう気がして、そして、そう思うと少し嬉しくなって足取りも軽くなっていました。
(因みに勿論、パリの冬は知りません)
何がそうさせたのか?
寒い雨、重く垂れ込めた曇、そして何より雨後の湿った空気でしょうか。
私の中のパリの空気感とぴったりあった冷たい湿度だったのかもしれません。
パリの冬といえば、昔、テレビドラマで見た焼き栗を思い出します。
場面は確かパリだったと思うのですが(パリじゃなかったかも……)、根津甚八が道で焼栗を買って、紙袋から出したそれを、剥いたそばから隣を歩く桃井かおりの口に無造作に放り込むというものでした。
子供ながらにドキッとするような場面でした。
脚本は確か向田邦子。「隣の女」っていう題名だったかなぁ?
向田さんはすごく好きでたくさん読んでたくさん見たからごちゃまぜになってるかもしれません。
剥いた栗を相手の口に直接放り込むなんて!
すごくドキドキしました。
って言うわけでその場面だけは今でも覚えています。
私の中の焼き栗といえば、子供の頃、父が会社帰りに買って帰ってくた天津甘栗です。
父の会社近くの大通りの角に「天津甘栗」を売っているところがあって、お土産に買ってきてくれたのです。
時々それを持って帰ってくれるのが、子供ながらにすごく嬉しかったし、案外父が栗好きだったからなのかもしれません。
でも子供の手では(爪では)中々上手く切れ目が入れられなくて、栗が丸ごときれいな形で剥けないでいる隣で、父が、大きな手と爪でパカッと開けているのを感心しながら見ていました。
その頃、甘栗といえば大きな鉄の釜に黒い石がジャリジャリ入っているところに自動のかき混ぜ機が円を書きながら回している風景でしたが、そういえば実際栗をその中で炒っているのは見た事なかったなぁ……。
で、加熱されて売られている栗といえば、天津と言うんだから中国のものなんだなという認識で、まさかフランスのパリの道端でも売ってるなんて知る由もなく、そして今でも、本物は見たことないです。
そんなことを書いてるうちに、栗ご飯の話やモンブランのことなど、書きたいことはたくさんあるけど、止めどないので今日はここまで。
冬のパリに行って根津甚八みたいな人に無造作に栗を口に放り込んでほしいな、と夢見る今日でした。