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愚痴袋でした

この人は誰かに愚痴をこぼす事で
自分を追い込んでしまったと
今となってはそう考える
よかれと思って何も否定しないで
時には肯定する形でこの人の
愚痴を半年ばかり聞いていた
そうするとこの人は自分の愚痴が
聞き入れらることに高揚して
いったのかもしれない
愚痴の内容に奥行きが出てきて
さらに小さな愚痴から大きな愚痴へと
変化していった
この人の愚痴を毎日聞いていると
また同じような愚痴が出てくる
それを聞いたときにこちらも
また同じ内容かと表情に出ているはず
それを読み取ったこの人は
さらに別の新しい愚痴を見つけて
話してくれるようになった
その新しい愚痴に同調すると
その高揚感でこの人は愚痴に覚醒していく
そのような繰り返しを半年も続けたら
聞いているこちらも愚痴の負に侵されてしまう
この人の愚痴を聞き続けた半年間
この人はいつも不健康そうにやせ細り
少し内臓の病気じゃないかと疑いたくなるぐらい
この人は愚痴を言いながら、お腹が泣く音を出す
大丈夫かなと心配しながら
こちらも愚痴を聞いていたが
ここ数か月はこの人を避けて
愚痴を聞かないようにしてみた
少し気になる事があった
愚痴をよく聞いていた時のこの人の
普段の声のトーンが愚痴を聞かなくなってから
まりやかになりトゲがなくなった気がした
これは気のせいかもしれないけど
この人は何か変わったのかもしれない
なぜ変わったのか本当の理由はわからないが
何か愚痴を聞いてもらえなくなって
大きくなった愚痴袋のような物が
この人の中で消化できるような胃袋みたいに
変化して愚痴をオナラのように
こっそり出してしまえるようになったんじゃないだろうか
あの愚痴を聞いていた頃の
この人のお腹が泣く音は
愚痴袋が必要以上に新しい愚痴を入れた時の
本当の愚痴だったのかもしれない
この人はこのあとの今年の数か月
愚痴袋を胃袋に吸収させて
もう少し健康的な生き方を
できる事を願う
それまで愚痴は聞かないでおこう



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