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加納朋子『モノレールねこ』を読んだよ

大学の図書館でウロウロしていたら、ポップ(学生がつくったのかな?)が目に留まった。
ねこが好きなのと、タイトルの「モノレールねこ」ってなんだ?と気になったので借りた。
読み終えた今、とても良かったので買おうか悩んでる。

裏表紙には「大切な人との絆を描いた8選」とあった。自分が捻くれているからか、どうも胡散臭いような印象を抱いてしまう。

どの作品も登場人物にはなにかしら抱えているものがあるが、鬱々とした雰囲気はなくユーモアを交えながら話が進むので読みやすかった。作者が読者を想って表現してくれているのが伝わる。
ダメ人間と評されるような登場人物も最初は「嫌い、うざい」という印象だったのに、読み終わる頃には「ちょっと良いやつじゃん」と思えるようになっていて、少し悔しい。

作中で印象に残った言葉をいくつか挙げたい。
*まだ読んでいないという人は読み終わってからまたきてくださいね

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"バーカ"

「モノレールねこ」p.24,35

シンプルイズベースト!バカという言葉を正しく使っている気がする。伸ばし棒が入ることで少しかわいらしい感じもするし。タカキは覚えていてわざと使ったのかな…?そしたら相思相愛じゃーん!なんてね笑。

そしてどういうわけか、ますます太ったモノレールねこのことを、前ほどには不細工だと思わなくなっていた。

「モノレールねこ」p.27

アニメとか観てるとよくある現象な気がする。「あたしンち」のしみちゃんとか最初はブスだなーって思ってたけど、今では好きなキャラになってるし、色っぽさも感じる。母はいつ見てもブスで安心する。ブスだと思っていた相手を好きになるのってかなり大きい愛なのではー?!?!(ちなみにあたしンちのお母さんはブスだけど好きです。)

左:しみちゃん 右:母
「あたしンち」

"話ぐらいは聞いてあげるべきなのだ。たとえそれが、愚痴とか、不満とか、母の知人の誰かの悪口ばかりだったとしても。…(略)黙って聞くべきなのだ。"

「パズルの中の犬」p.51

私も同じようなことを思うことがある。バイトを辞めてから、大学生のくせに祖母から毎月お小遣い1万円をもらうようになった。自分から「ちょうだい」と言ったわけではないが、くれるので「いらない」と言わずにありがたく受け取っている。それなのに、祖母からの食事の誘いを面倒に感じていて、「どうせサイゼかスシローだしなぁ」と心の中で思っている(奢ってもらう分際で)。でも本当に面倒くさいのよ。目を離すと危ないし、タッチパネルの操作とか全くできないし、時間にルーズだし…(以下略)。祖母を煙たがることには罪悪感もあるのよね。そのうち祖母の記事でも書こうかしら。

"「私は何も変わらない。変わったのはみんなの見る眼の方だよ。あんなことがあったんだから、私が変わるべきだって思ってる。変わらなきゃおかしいって思ってる。どうして前と同じでいちゃ、いけないの?」"

「マイ・フーリッシュ・アンクル」p.107

変に気を遣われることが嫌みたいな時あるよね。だから相手に気を遣っていることを察されないように、気を遣っていないように振る舞って実は気を遣っているみたいな…。ん?どいういことだ、、?

"違うの、とはどうしても言えなかった。幼い頭にも、卑劣な計算は存在している。明らかに私は自己保身のため、沈黙を通し、そして一生を忘れたのだ。"

「シンデレラのお城」p.155

小さい時に犯した罪、覚えていますか?
私は昔、博物館だかどこかでジオラマに触って、その後に「手を触らないでください」という注意書きを見つけて、ヒヤヒヤした経験があります。その時は誰にも言えなかったんだよね。幼い頭で「警察に捕まるのかも😱」とか考えてて、指紋から警察に見つかって逃げ回るという悪夢を何度か見ました。

"「もしあの子が女の子だったとしても、やはり限度はありましたかと……若い人はいつか、巣立っていくものでございますから」"

「セイムタイム・ネクストイヤー」p.182

自分もそろそろ巣立つかもしれないけど、この先現れるかどうかもわからない自分の子どもが巣立つことを想像して、少し感傷的になっちまったぜ。

"なにげにランに失礼なやつだ。"

「ちょうちょう」p.194

そーだそーだ!目の前に空いてるレジがあるのに、わざわざ隣のレジに並ぶんじゃねぇ!!

"「子供なんて、命に代えて守るようなもんじゃないですよ」"

「ポトスの樹」p.226

強烈な一言。
今の人生の中では自分自身が一番かわいくて大切な存在だけど、私がもし親になったら「命に代えても子どもを守りたい」と思うようになるのかな…?

"傷ついた心とか、無くした自信とか。そういうものが、魔法みたいに、簡単に癒えてしまえばいいのに。"

「バルタン最期の日」p.285

この文章に作者の優しさを感じた。作者は、傷ついたものが簡単に癒えることはないということを知っていて、それでも少しでもそうした傷を癒せるようにと温かい文章を書く人なんだろうな。

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ベタかもしれないが、敵キャラが味方になったり、嫌なやつが良いやつに思えるようになったりする展開、好きなんだよなぁ。

「モノレールねこ」、どの作品もとても良かったです。全部好きだからどれが1番とか決められないや。加納朋子さんの他の作品も読んでみたいなー。

最後まで読んでくれてありがとう!

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