GPSが「100%の精度」ではないワケ
大変ご無沙汰しております。毎度この挨拶で恐縮ですが、おかげ様で大会準備・運営に明け暮れる日々を送らせていただいております。そんなわけで、今年も「KAKITSU」始動です。会場キャパの関係で泣く泣くエントリーを締め切った前回大会から早10か月、より多くの方にご参加いただけるよう改良を重ねたコースで皆様をお待ちしています!
さて、このまま宣伝だけで終わってしまうのは寂しいので、大会に絡めた話題をひとつ。テーマは今やランニングに欠かせないものになっている「GPS」です。それでは、今回もよろしくお願いします。
1. GPS(全地球測位システム)とランニング
とにかく便利な「GPSランニングウォッチ」。身に着けてスタートボタンを押すだけで、走行距離もペースもラップも測定してくれる優れものです。ランニングの大会運営に携わる私たちも大変お世話になっています。ただ、皆さんこういったご経験はないでしょうか?
「GPSウォッチで測った距離と実際の距離表示が違う!」
このせいで、想定していた距離のデータがとれず不完全燃焼に終わった方、逆にスパートのタイミングを早くしすぎて地獄を見た方、どちらも多いと思います。私も両方とも経験済みです。では一体何が悪いのかというと、これはGPSの仕組み的に致し方ないところがあります。
GPSはすごくざっくり言うと、はるか宇宙の「人工衛星」から電波を受け取って位置情報を割り出すシステムです。複数の衛星(3基+1基)と自分(GPSウォッチ)との距離が計算され、それらがひとつに交わる点が現在地となります(以下参照)。
これを踏まえると、自分の数メートル単位の移動を100%の精度で記録するのは少し無理があるように思えます。実際にカーブや折り返しは自分が走ったルートよりも大回り、あるいは小回りで記録されがちで、それが積み重なって誤差が大きくなることも。公認のフルマラソン大会でも、ルート取り次第で「+0.5km」くらいは全然ありえる話です。
距離に関する議論で有名なのが、関西の「六甲全山縦走路」。長らく「56km」が公式とされてきましたが、ロードメジャー(車輪の回転数で距離を測る)使いの猛者により約「48km」の実測値が導き出されました。ところが、GPS派の中では約「45km」というのが主流なようで、結構な開きがあります。実は私も何度か縦走経験がありますが、手元のGPSはいずれも「42km」程で、これまた違う数値です。
ロードメジャーだけでなく、同じGPS間でもこれだけの差がでています。それだけ、その時々の条件が影響すると言えそうです。特に山では急斜面が多く、それが距離のズレを大きくしていると考えられます。また、GPSデバイスといっても、単純に上空からの平行移動距離を測定するもの、標高差から距離を補正してくれるもの(これも標高の測定精度によって変わる)と様々で、決して一様ではないのです。
環境というと、この電波は「障害物」にはめっぽう弱いです。例えば高層ビルが立ち並ぶような場所やトンネル内では、うまく位置情報を受信できないことが多々あります。建物内は言わずもがな。実際にやってみると、ワープしまくりのとんでもない軌跡を描きます。最高時速が50km/hを超えたり色々と面白いので、一度試してみてはいかがでしょうか。
2. 生データで比較
では、実際に条件を変えてみるとどんな影響が出るのか。「KAKITSU」のコース調査の中でちょうど面白いデータが得られたので、今からそれを見ていきたいと思います。ここでの条件の違いは「位置情報の受信頻度」。具体的には「約1秒に1回」と「約30秒に1回」の2パターンです。(ペースはいずれも「徒歩~軽ジョグ(6km/h~10km/h)程度」)
◎比較1(ロードの登り部分)
◎比較2(トレイルとロードの境目)
精度的には「1秒に1回」の一択なのかと思いきや、なんと「比較2」のコースの転換点で間違ったルートを記録してしまいました。どうやらコースが複雑になると、受信頻度の多さが裏目に出ることがあるようです。また、今回はペースがゆっくりで、1回の移動距離が短かったことも関係ありそう。移動速度によっては、あらかじめ位置情報の受信頻度を少なく設定するのも良いかもしれません(バッテリー持ちも良くなる)。
3. まとめ
ここまでをまとめると、以下の要因がGPSによる距離測定に影響を及ぼすと考えられます。
・カーブや折り返しの数(大回り小回り分の誤差の発生)
・累積標高(機種によって傾斜部分の測定精度の差が大きい)
・移動速度の違い(位置情報の受信回数/間隔が変わる)
いかがでしょうか。GPSにもどうしても苦手な部分はあるので、あまり過信すると逆にランの質を下げるとこになりかねません。つまるところ、距離表示がしっかりある場所では、それを信じるのが吉です。
とは言え、GPSウォッチが大変便利で優れているのは間違いありません。こうした弱点も踏まえながら、うまく活用していくことが大切です。「それでも何かおかしい…」という方は次の部分を確認してみましょう。
・スタートボタンを押す前にあらかじめ位置情報を受信できているか(測定モードの画面上でピピっと音が鳴る)
・位置情報の受信頻度が速度に応じた設定になっているか
最後に、今年の「KAKITSU」は7月30日(日)開催です。新しい発着点は「龍野公園」。駐車場のキャパを拡大しつつ、電車でもアクセスできるようになりました(本竜野駅からたったの徒歩20分!)。また、サブタイトル通り「関西の小京都」龍野をより堪能できるコースとなっております。詳細な情報はこれから随時お出ししていけたらと思いますので、ぜひご検討ください!
ではまた。
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