通勤電車の「混雑」を「賑わい」へアップデートすべく、自分たちのアプリを山手線に載せることになったお話
連日失礼いたしております。
本日、こんなプレスリリースを発表させて頂きました。
JR東日本×ロフトワーク×Deep4Driveで取り組んできたNewHere Projectがこの度、「山手線 Ver. 2020」というかたちで日の目を見ることになりました!
Deep4Driveの説明はこちらからぜひ!
Deep4Driveは、「山手線AR」というアプリを開発するかたちでこの取り組みに参加させていただきました。
アドストラップの二次元コードをスマートフォンで読み込むと、山手線沿線のランドマークが画面上にARとして現れます。気に入った背景や効果を選び、そのままSNSに投稿することもできます。これまでの通勤電車にはなかった新しい体験をお楽しみください。
こういったサービスです。山手線ARそのものは、2月3日~17日の間に山手線に乗ってぜひお試しいただくとして、今日はこのサービスを開発するに至った思いを少しお話させてください。
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■ NewHere Projectとは?
NewHere Projectとは、JR東日本、ロフトワーク及びモビリティ変革コンソーシアムが主催する、モビリティをテーマにしたサービス開発支援プログラムです。2019年7月にアイデアの公募があり、Deep4Driveを含め、審査を通過した5チームが、開発資金やメンターからのサポートのもと、実際にアイデアをプロトタイピングし、社会実装に向けて取り組んでいます。私自身は、Deep4Driveとして、このNewHere Projectの陣頭指揮をとらせて頂きました。
■ 通勤電車を探求する
Deep4DriveがNewHere Projectで取り組んだテーマはずばり、「通勤電車」でした。
Deep4Driveとして次やるべきテーマは「電車」だと常々考えていました。なぜなら、自動運転がこれから普及しつつある中で、日本人の足を支えてきた「電車」というものにも、取り組むべき余地があるのではないか。「電車」にこそ、日本という国で活きるモビリティのかたちもあるのではないか、漠然と考えていたからです。
(昨日投稿したnoteより)
こんな仰々しいことを書いてますが、元より、自分自身が中学生のころから毎日電車に乗る日々を過ごしたなかで、「なんで電車っていつまでもこんなに混むんだろう」という純粋な疑問がありました。社会人一年目時の家探しの要件に、「学生時代に乗っていた電車(混雑することで有名な路線)には絶対に乗らないこと」がTOPプライオリティにあるくらいです笑
自分に限らず、多くの鉄道会社、事業会社、国や自治体までもが、「満員電車」を社会問題と捉え、様々なアプローチから解決を図ろうとしていることは、皆さんも一度は目にしたことがあるかと思います。
ただ、個人的な考えですが、上記で取り上げた取り組みが本当に実を結ぶためには、少々時間がかかると思っています。なぜなら、「満員電車」を根本的に解決するには人の流れを変える(e.g. 時間帯をずらす)ことが重要だからです。ただ、通勤という時間帯は特に厄介で、朝起きて仕事に行き、夜に帰り寝るという日本国民の多くがやるルーティーンです。要するに、いちステークホルダーだけの力では到底難しく、鉄道会社、通勤電車に乗るユーザーを雇う企業、国・自治体、そして「混んでても仕方なく電車に乗るしかない」という価値観までにもアプローチしていかなければなりません。
そんな前提のもとに、一端の有志団体として活動するDeep4Driveに取りえるアプローチがあるのかを考える必要がありました。無論、上記に取り上げた事例と同様のアプローチは、僕らの力では難しいです。
アイデア出しやユーザーリサーチを重ねていく中で、一つの仮説が浮かんできました。
「混雑」と「賑わい」って実は表裏一体ではないだろうか
たとえ同じ人が密集している「混雑」した電車でも、何かのトリガーをきっかけに、「賑わい」にできれば、その電車をお祭りみたいな空間にできるかもしれません。そうすれば、毎日仕方なく乗っている電車にも、少しは楽しみが持てるかもしれません。言い換えると、「日常」から「非日常」への変換作業が必要だということです。
(こんな電車が)
こんな電車に!(引用元)
■ 日常を拡張する
僕らがここで着目したのは、電車内に張り巡らされている広告でした。
普段電車に乗ってて、広告をまじまじと見る人はそうそういないと思います。結局、一辺倒な内容だと、それは日常の一部に溶け込んでしまうし、それが強迫観念に溢れる内容だと、日常を通し越して嫌悪の念しか生まれなくなってしまうと思うのです。
これらのツイートが指し示すことって、電車という空間でも、僕たちを癒してくれたり、新しいものへの探求心や刺激を与えてくれたり、何かのきっかけを作ってくれるものだと思うのです。例えば、東京メトロの「Find My Tokyo」に出てくる石原さとみを見て、癒されたことがなかった人っていませんよね。JR東海の、「そうだ京都行こう」を見て、京都に行きたくなくなった人なんていませんよね。
(引用元)
ここにこそ、僕らが目指す、「混雑」→「賑わい」、「日常」→「非日常」の要素が詰まっていると考えました。
ただそれと同時に、今までの広告と同様にコンテンツドリブンなモノを作るだけでは、それは一過性のキャンペーンに終わってしまうとも危惧していました。そのため、コンテンツドリブンではなく、その周りを担うフレームワークドリブンでサービス開発することを心がけました。
■ 「ちょっとだけ」を定義する
こういった背景で開発されたのが、今回、山手線に搭載される「山手線AR」です。中身はシンプルで、つり革に掲載されたQRコードを手元のスマートフォンで読み込むと、山手線沿線の有名なシンボルがARとして出てくるサービスです。ARが出てきたら、その様子をTwitterに投稿することもできます。
こんな感じのがつり革に貼ってあります(引用元)
ちなみに、山手線ARで目指す構想はこんな感じです。
スポーツの素晴らしさに感動したり
チームラボっぽさを感じたり
マイナスイオンを感じたり
ARをはじめとする拡張技術を用いれば、これらの世界観を表現できる第一歩だと考えました。ここで意識したのは、先述した「フレームワークドリブン」であることです。言い換えると、僕らが山手線ARに込めた思いは、これまでの通勤電車に搭載することが難しかったARという技術を用いたら、車内空間をここまでガラッと変えずとも、日常の先「ちょっとだけ」でも非日常な体験を与えることができるということです。
まさにこんな感じ
■ 山手線から未来のモビリティを彫刻する
今回、僕らが開発したARアプリを、あの、山手線に搭載させて頂きます。1週間で3,000万人弱が利用する、世界を代表するお化け路線です。この企画を準備していくにあたり、たくさんのJR東日本の関係者にお会いし、話を伺う機会を頂きました。
一番印象的だったのは、Deep4Driveという法人格でもないコミュニティと組み、「山手線 Ver.2020」の企画を進めて頂いたことです。そこにはまさに、Deep4Driveが理念とする「モビリティの未来を、オープンイノベーションで」が体現されていたと思います。
そして、Deep4Driveが目指すのは、つり革を用いたARにとどまりません。ようやくスタート台に立てた、ver0.01くらいのつもりでいます。中づりやサイネージといった車内空間のパーツから、駅・商業施設をはじめ、そこで暮らす人々の生活の節々にアプローチしていく必要があると考えています。
そのころにはきっと、「広告」とか「電車」とかでは形容できない、未来のモビリティのかたちが提示されているかもしれません。
Deep4Driveでは、そんな未来のモビリティを実現するべく、今後もプロジェクトを推進していきたいと思います。
■ さいごに
このサービスには、Deep4Driveに在籍している4名の有志メンバーによって開発されました。みんなARの開発経験もなく、ほぼゼロからのスタートです。毎週木曜日23時から週次でMTGを行い、進捗を報告しています(いつも研究室や仕事で忙しい中、遅い時間まで本当すみません泣)こんな短期間でサービスを仕上げてくれたメンバーには、ほんと頭があがりません。
Deep4Driveとしても、彼らが胸を張って「これ俺作ったんだぜ!!」といえるサービスができたと思います。
そして何より、このプロジェクトに協力してくださった、JR東日本東京支社の星野さん・服部さん、JR東日本の青柳さん、ロフトワークの柳川さん、メンターとしてサポートしてくださったデザインディレクターの石川さんに厚く御礼申し上げます。
そんなわけで、2月3日~17日は、ちょっと未来の通勤電車を体感しに、山手線に乗りましょう!!
ではでは
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