現代版・徒然草【24】(第40段・結婚できない)
ちょうど3日前は、あの有名な作家の小林秀雄が死没して、丸40年であった。
読書好きな人なら、『無常といふ事』や『本居宣長』、『考えるヒント』などの名著をご存じだろう。
小林秀雄が、徒然草の第40段の内容に言及しているので、興味がある人は調べてみるとよいだろう。
では、その40段の原文をみてみよう。
因幡国(いなばのくに)に、何の入道とかやいふ者の娘、かたちよしと聞きて、人あまた言ひわたりけれども、この娘、たゞ、栗をのみ食ひて、更に、米(よね)の類を食はざりれば、「かゝる異様(ことよう)の者、人に見ゆべきにあらず」とて、親許さざりけり。
以上である。
読みやすいと思うが、ひとつひとつ訳していこう。因幡国は、今の鳥取県である。
「何の入道とかやいふ者」というのは、なんとかいう入道殿という意味であり、かの藤原道長もそう呼ばれていた。要は、権力者の娘のことである。
その娘が、「かたちよし」(=容姿端麗)と聞いて、「人あまた言ひわたり」(=男がたくさん言い寄ってくる)けれども、栗ばかり食べて、お米の類のものを食わない。
要は、偏食がひどいということだ。現代で言えば、1日3食をチョコレートで済ませて、ご飯類を食べないのと同じだろう。
ダイエットでこういう食生活をしていると言う女性が、私の周りにもいた。
本文に戻ると、親(=入道殿のこと)は、「かかる異様の者」(=こんな変な娘)は、嫁にやれないと言って許さなかったそうだというふうに、最後は締めくくられている。
ここで、注目したいのは、娘が本当に変な娘なのかということである。
男が言い寄ってくるということは、それだけモテモテなのだが、当の本人にとっては迷惑だし、誰と一緒になろうとかいうのも決めかねるわけである。
そうすると、これは娘の知恵であって、わざと親の前で偏食ぶりを見せて、男たちの誰かと結婚をさせないようにしたのではないかと考えられる。
似たような話では、「かぐや姫」(=竹取物語)のお話がある。男たちに求婚されるが、できもしない難題を与えて、自分との結婚が実現しないようにしたところは、知恵としては共通している。
絶世の美女といわれた小野小町が、求婚してきた男に対して、自分のところに100日通えと言ったことについても、同じような見方ができるだろう。
さて、現代の女性は、どうやって男に求婚をあきらめさせるのだろうか。