ピンピンコロリとネンネンコロリ【第1章①】
私の祖父は、自宅で亡くなった。もとから病院嫌いだったので、病院で最期を迎えるという選択肢はなかった。
だが、最期は、周りに家族が駆けつけて見守られながら息を引き取ることにはならなかった。
万全の態勢は整えていた。
自分の容態に異変を感じたら、携帯のボタンをワンプッシュするだけで、私の母親の携帯に電話がつながるようになっていた。
しかし、その日に限って、携帯電話を自分の手の届くところに置いていなかったのである。
祖父は、携帯のある場所まで、苦しみながらも手を伸ばそうとしたようであるが、手が届かないままに息絶えてしまった。
だから、祖父の死に顔は、苦悶に満ちた表情で、目は開かれた状態だったという。
そういう実体験があるからこそ、私は、自分の死に際については、しっかりと考えている。
独身の人が、既婚者に「結婚しないと、一人で寂しく死ぬんだよ。」とよく言われるが、私は、そんなことは気にしなくて良いと断言できる。
祖父は、孫に恵まれても、誰からも看取られずに亡くなったのだから。
明日も死に際について、考えていこう。