20世紀の歴史と文学(1976年)
1976年は、政界の闇が暴かれた大きな事件が起こった。
「ロッキード事件」である。
元総理の田中角栄が逮捕されたことで、日本中が注目した事件だったが、これは、世界各国の有力者も逮捕されるほどの大規模な事件だった。
簡単に言えば、この事件は、アメリカの航空機製造会社の大手だったロッキード社が、政治家たちに賄賂を贈って自社の航空機の発注に関して便宜を図っていたことが明るみになった事件である。
2月に、アメリカの公聴会で事件が明るみになってから、日本でも、当時の三木武夫首相の指示のもと、前総理の田中角栄の事件との関わりについて捜査が進められた。
田中派はこれに反発し、政界では派閥同士の駆け引きが行われたが、そうこうしているうちに、東京地検特捜部がすばやく動き、7月下旬に田中角栄は逮捕された。
当時の自民党はこれによって党内分裂状態になり、一連の混乱の責任を追及する形で「三木おろし」が加速した。
だが、自民党の当初の派閥同士の駆け引きが、国民の目には「ロッキード隠し」と映ったため、12月の衆議院議員総選挙では、自民党は8議席を失うことになった。
結果的に、三木武夫は退陣を表明し、後任の総理大臣として福田赳夫が就任したのである。
ちなみに、1976年に行われた衆議院議員総選挙は、衆議院議員の4年間の任期満了によるもので、これは、戦後初の出来事だった。
それ以来、直近の衆議院議員総選挙まで、任期満了による理由で衆議院議員総選挙が行われたことはない。
つまり、時の内閣による解散総選挙なのである。
直近の衆議院議員総選挙は、2021年10月31日に行われており、このときは今の岸田内閣だった。
ただ、岸田内閣は、この年の10月4日に菅義偉内閣からバトンを受けて成立していて、実は、解散総選挙をしなければ、10月21日が任期満了の日だった。
それでも、岸田総理は、10月14日に衆議院を解散すると表明したため、1976年以来45年ぶりに実現すると思われた任期満了による衆議院議員総選挙は幻となった。
さて、来年2025年10月まで衆議院解散はあるのだろうか。
最後に、この年の9月に、中国では、あの毛沢東が83才で亡くなったことに触れておこう。
奇しくも、毛沢東とともに中華人民共和国の建国以来、首相として歩んできた周恩来も、この年の1月に亡くなっている。
日本が1972年に中国との国交正常化を実現できたのは、この毛沢東と周恩来の二人の時代であったが、中国では一つの時代が終わったのである。