唱歌の架け橋(第26回)
先週の世界の民謡シリーズに続き、唱歌の架け橋シリーズも、今週がラストである。
最後は、作曲家の中田喜直(なかだよしなお)と、その父親である中田章(あきら)の作品で締めくくろう。
中田喜直は、まさに20世紀を代表する童謡の作曲家であり、ちょうど20世紀末の2000年に76才で亡くなった。
昨年は、中田喜直の生誕100年にあたる年だった。
まずは、今日紹介する歌『おかあさん』の歌詞を次のとおり示そう。
【1番】
おかあさん
なーあに?
おかあさんっていいにおい
洗濯していたにおいでしょ
シャボンの泡のにおいでしょ
【2番】
おかあさん
なーあに?
おかあさんっていいにおい
お料理していたにおいでしょ
卵焼きのにおいでしょ
以上である。
作詞は田中ナナだが、上記の歌詞に母と子の会話が微笑ましくなるようなメロディーを付けたのが中田喜直である。
ニ長調の旋律で、音を拾うと次のとおりである。
(上記の歌詞に対応させて改行している)
ファ#ラーファ#ラ
シーファ#シ
シド#ーラファ#(八分休符)ラシーミミミ
ミミミミミミララファ#ファ#レレミ
ファ#ファ#ララシシーラシレシラレ
こんなメロディーである。
実は、中田喜直は、サトウハチローが作詞した『ちいさい秋みつけた』『かわいいかくれんぼ』『わらいかわせみに話すなよ』の作曲もしている。(本シリーズ第21回から25回までのサトウハチロー特集で取り上げている)
『おかあさん』の歌は、他の作曲家や作詞家の手によって生まれたものが多数あるが、親子の会話をそのまま歌にしたというのは珍しい。
子どもの服を毎日洗濯し、子どものために料理に腕をふるっていた母親というのは、やはり女の子にとっては憧れの的なのかもしれない。
最近は、男も家事をやるのが当たり前なのだが、こんな微笑ましい会話が、これからの時代においても、明るい家庭の象徴としてぜひ受け継がれていってほしいものである。