文学探訪(10)「夫婦」
あさってがバレンタインデーということもあり、この土日は、男と女の関係が複雑に絡み合う小説を紹介しよう。
なかなか読みごたえのある作品であるが、読んだことがない人は、図書館や書店で手にとってみるとよいだろう。
さて、本のタイトルに「夫婦」が入る大阪が舞台の小説が思いつくだろうか。
織田作之助の『夫婦善哉』(めおとぜんざい)である。
織田作之助って誰?と思われる方もいるだろう。太宰治と同時代の作家であり、太宰と同じく30代の若さで戦後まもなく結核で亡くなっている。(太宰治は入水自殺)
内縁夫婦の人生を描いたものであり、妻子ある男に一人の女性がどう接近していくかがドラマチックに書かれている。
大阪の北新地が舞台なのも、味があって良い。
もうひとつは、島尾敏雄の『死の棘』(しのとげ)である。
こちらも、旦那の浮気に、穏やかだった妻が豹変し、神経に異常をきたすというサスペンスものの小説である。
夫婦とは何かを考えさせられるし、もとあった絆を取り戻そうとする展開は、胸を打つ。
たしか、30年前の映画で、松坂慶子と岸部一徳が演じていた。
バレンタインはチョコとか考えるだけでなく、こういう機会にこそ、愛をテーマにした映画や小説に触れるのも良いだろう。