法の下に生きる人間〈第77日〉
過払い金返還請求ができますよ、という法律事務所のCMがテレビでよく流れているのを知っている方も多いだろう。
なぜ、これが可能になったのかということを、法改正の経緯を踏まえて説明できる人は少ない。
特に、2000年の時点でまだ子どもだった人は、詳しくは知らないだろう。この年は、安達祐実が18〜19才だったときである。
1999年の臨時国会で、①出資法(=出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律)と②利息制限法と③貸金業の規制等に関する法律(=今で言う「貸金業法」)の法改正が実現し、2000年の6月から施行された。
この3つの法改正で注目されたのは、出資法の上限金利が、年40.004%から年29.2%に引き下げられたことである。
先に言っておくが、出資法の上限金利は、この10年後にさらに20%にまで引き下げられ、今に至っている。
この出資法の上限金利と、利息制限法で定められている利率の乖離が長らく続いていたことによって、いわゆる「グレーゾーン金利」が発生し、ヤミ金の取り立てや消費者金融のキャッシング返済に苦しむ人が続出していたのである。
そもそも、利息制限法は明治10年からあった法律であり、現代のお金の価値に合わせた法律も1954年(=昭和29年)に施行されている。
この利息制限法では、第1条で次のような定めがある。(但し、分かりやすくするために、私のほうで、必要に応じて補記をしている。)
(利息の制限)
【第一条】
金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。
一 元本の額が十万円未満の場合
→年二割(=20%)
二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合
→年一割八分 (=18%)
三 元本の額が百万円以上の場合
→年一割五分(=15%)
以上である。
このような定めがあるにもかかわらず、出資法の上限金利が40%だったとき(1999年以前)は、いわゆるサラ金や商工ローンは、利息制限法の利率を超える金利で、合法的に貸付けができていたのである。
それが、2000年には29.2%に引き下げられ、2010年には20%に引き下げられたことで、これを超過して貸し付けた場合は、貸金業者は刑事罰に問われることになった。
今、過払い金返還請求が可能なのは、こうした二度の法改正の過程でもし借入れをしていた場合、必要以上に払っていた利息が戻ってくる可能性がありますよということである。
ただし、すべてが認められるわけではないし、場合によっては証明できるものも必要になるかもしれない。
続きは、明日である。