レールを外れると貧困が待っている。
「こんなに働いてこの給料。なんのために生きているんだろう」
給与明細を見て、そう思ったことがある方もいるのではないだろうか。
特にいわゆる非正規労働者と呼ばれる方々にとっては、余計にそうではないだろうか。
最新の統計では、労働者数における非正規労働者の割合は37.1%。※
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/23-2/dl/07.pdf
この中には、様々な事情があり、非正規で働かざるを得ない人々も一定数いるだろう。
「ライフスタイルの多様化」
といえば聞こえはいいのかもしれないが、それは
「自分から進んでその状況を受け入れ、かつ、その状況に満足している」
というような留保が付くのではないだろうか。
東洋経済オンラインで公開されている
「ぼくらは、貧困強制社会を生きている」
という特集では、様々な事情で「貧困」状態に陥ってしまった人々の
物語にフォーカスしており、自分もいつかこうなってしまうのでは……
と考えると、怖くなってしまう時がある。
もしもまだ読んだことのない方がいれば、
是非ご一読いただきたい。
もっともこの特集は「男性」にフォーカスがあてられているが、
「貧困」という問題は性別に関係なく襲い掛かってくる。
社会保障費の増額や賃上げよりも早いインフレーションの波にのまれ、
日本の人々の生活はますます苦しくなる傾向にある。
こんな状況で、なんらかの事情で職を失い、
パートやアルバイトで生活をしなくては行けなくなった場合、
問題は数多く付きまとう。
そもそも新しくパートタイムなどで雇ってくれるところはあるのか。
手元に残る金額はどの程度で、その金額で生活できるのか。
身寄りがない場合、賃貸・病院の保証人などはどうするのか。
などなど、挙げればきりがない。
「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」
令和6年度の労働白書には上記の文言が大きく掲げられていた。
しかし、根も葉もないことを書くが、
こころの健康には金銭的余裕が大きくかかわっているのではないだろうか?
結局のところ、お金がなければ生活はできない。
これは私の想像ではあるが、
ほとんどの人々は生きていくために仕事をしているのであって、
もしも大金が、それこそ一生働かなくてもよい金額を手に入れたとしたら、
仕事をすぐにでも辞めるという人々がほとんどなのではないだろうか。
昨今流行っている「FIER」などはまさにそれが目的だろう。
私はジャーナリストではないが、
今までに数回、それまでは関わりを持ったことのない方々に
インタビューに協力していただいたことがあった。
具体的に提示するのであれば、
いわゆる「トー横キッズ」と呼ばれる少女。
歌舞伎町で夜の10時頃、(本人曰く)17歳の少女に話を聞いた。
また、あるときはフリーターの男性にも話を聞いた。
2人に共通していたのは「居場所がない」「仕事がない」「お金がない」
という所だろうか。
都市部を中心にコミュニティの希薄化が叫ばれているが、
「トー横界隈」と呼ばれるようなコミュニティが形成されたのは、
このようなことが原因なのかもしれない。
結局のところ「学校」「職場」といったコミュニティになじめない、
あるいは入れない人々が新たなコミュニティを(無意識的に)創りあげる。
その1つが「トーヨコ」や「グリシタ」なのかもしれない。
そんな場所に忍び寄り、闇バイトや売春をそそのかす大人がいるということは、とても悲しいことである。
が、多くが学生の身分である彼ら・彼女らがお金に困っていることは
想像に難くない。
実際、ほとんどは家や収容施設を抜け出してそこに集まっているワケなのだから。
結局のところ、彼らのような無知な少年少女や、
最近毎日のように取り上げられている「闇バイト」に手を染めてしまうような人々が直面している問題は、なんといっても「貧困」だろう。
そこに至る過程には様々な事情があるはずだ。
単にストレスからギャンブルにハマったという方もいれば、
この文章の冒頭で触れたように、社会構造から貧困を強制されてしまった方々もいるだろう。
前者はともかくとして、後者の方々は適切に福祉とつながるべきである。
繰り返しになるが、
「お金の余裕は心の余裕」だと私は考えている。
金銭的な余裕がなければ、落ち着いて、
つまり物事を俯瞰して、客観的に捉えることができないだろう。
だからこそ、犯罪に手を染めてしまう。
あるいは、自ら命を絶つという「極端な選択」をしてしまうのだろう。
こうした状況に陥るのを防ぐため、日本には生活保護がある。
私はこの制度は、ためらわず使うべきだと思っている。
しかし実際には「水際作戦」なる、行政がそもそも生活保護を申請させない行為があることや、
世間からのバッシングがあることも承知している。
それでも、大切なのは自分がどう生きるかであり、周囲の目ではない。
休むべき時はしっかりと休み、未来を考えるべきだろう。
同様の理由として、私はつらいのならば会社は辞めてもいいと考えている。
私自身、最初に入った会社を半年でやめているというのあるは、
所属していて精神を病むほどのコミュニティはどこかがおかしい。
無理をしては取り返しのつかないことになってしまうのは、
少なくともあなたの人生にとっては損だろう。
もちろん、その先のことも考えなくてはいけない。
すぐにやめれば、次の職を探す際に苦戦するかもしれない。
いや、正規雇用を探すとなると高い確率でするだろう。
高学歴や資格がない限り、それは間違いない。
それでも、無理をし続けて、心が壊れてしまっては、
回復には何年も、何十年もかかってしまう。
うつ病というのはそれほど、恐ろしい病気である。
私自身は(まだ)そうではないが、
残念ながら無理をして、その病気になってしまった方々を、
私はたくさん見てきた。
「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」
そのために、私たちはもう少し、
自分自身を大切にする必要があるのではないだろうか。