フォーカシング・内観療法
心のモヤモヤと向き合う方法
フォーカシングとは
フォーカシングとは、シカゴ大学の教授だったユージン・ジェンドリンが開発した心理療法。ジェンドリンは来談者中心療法の創立者であるロジャーズと共に心理療法の研究を進めた。
「有効なカウンセリングとはどんなものか?」を調査し、カウンセリングの録音テープを分析した結果、「クライエントが言い淀むような独特な話し方をしているかどうか」が結果を左右しているということだった。
言い淀むというのは、自分の心の中を簡単に言い切らず、微妙な心の機微をフラフラと探っていくように語る様子のことである。
フェルトセンスとは
哲学者でもあったジェンドリンは、人の気持ちは「身体の感じ」として体験される事を導き出した。
身体の感じとは、イライラして腹部に圧迫感を覚えたり、不安で胸が詰まるような、原因ははっきりとしないものの、体験的に感じる、漠然としたものである。これをフェルトセンスと名付けた。このフェルトセンスを見つける作業が、フォーカシングで非常に重要な鍵となる。
Point
フォーカシングの鍵は、フェルトセンス。漠然とした身体感覚を感じるためには、心を鎮め感じるゆとりを大切にすること。
3つの過程を経てフェルトセンスと向き合っていく
フォーカシングの手順
①自分の内側に注意を向ける
②フェルトセンスと一緒にいる
③言葉にしたり、問いかけたりしてみる
①は自分の内面と向き合い、フェルトセンスを探る
②は見えてきたモヤモヤとしたものを認める
③はフェルトセンスに呼び名をつけ、「どんな感じ?」「何が伝えたいの?」と対話していく
フェルトセンスと対話する事で、新しい気付きが得られたり、身体が解放されるような体験が得られる。
フェルトセンスと付き合うコツ
①自分の内側に注意を向けるときには、あまり深く追求せず1つ1つを空間にきりわけていくイメージを持つ事(空間を作る)
②フェルトセンスと向き合うときには、五感を研ぎ澄まし、身体のどこで感じるか、どんな雰囲気で、どんなイメージが浮かぶのかを感じてみること
③フェルトセンスにふさわしい言葉やイメージを探していくこと(ハンドルをみつける)
④ハンドルはフェルトセンスに合うかどうか、いろいろ試してみること(共鳴させてみる)
⑤そのフェルトセンスとお友達のように一緒にいてみること。
⑥フェルトセンスに「この感じは何?」と尋ね、すべてを受とり、一緒にいること
Point
フェルトセンスと付き合うにはコツが有る
フェルトセンスと上手に付き合う術を身に着けておくこと
フェルトセンスとの付き合い方、見つけ方を理解する
フェルトセンスがみつけにくい3タイプ
フェルトセンスを見つけにくい人の傾向としてよく挙げられるのが
①評論家タイプ
②理屈家タイプ
③シャイなタイプ
このようなタイプの人には、まず静かに安心してゆとりを持った環境を用意すること。そして、大きく包み込むように自分の心を認めてみることが大切。
フェルトセンスと向き合う時の態度
①頭で理屈や原因を探ろうとし始めたら、すぐに身体がどう感じるかを意識する
②心の中に起きてくることを無視したり、排除したり、捻じ曲げたりせず、起きてくる事柄をそのまんま受け入れる
③どんなことでも軽んじたり、恐れたりせず、好奇心をもって取り扱う勇気をもつ
④フェルトセンスは、自分のすべてではなく、それは自分の一部であることを理解し、一部に囚われず巻き込まれない
Point
フォーカシングは、フェルトセンスとの対話が鍵
フェルトセンスと向き合う態度をしっかりと頭に入れておくこと。
フェルトセンスの見つけ方
①リラックスする
フォーカシングを実施する時は、無理に論理的に話そうとすると表現しにくいので、まずは深呼吸をして、心と身体の緊張を解きほぐし、リラックスする
②辛い時、不安な時の身体の状態・心の状態を思い起こす
フェルトセンスを見つけだすには、辛い時、不安な時の状態を思い起こす。
しかしこの時クライエントがつらそうであればストップして、信頼関係を結び直し、他の治療方法を導入する。
③言語化
フェルトセンスをみつけたら、それをクライエントに言葉にしてもらう。
クライエントの「なんとなく…」という感覚を共感し、しっかりと受け止めてあげて、フェルトセンスを明確にしていく。
Point
フェルトセンスを見つける時には、3ステップを暗記しておくことが鉄則である。フェルトセンスを見つけられないときの対処法も、しっかりと覚えておくこと。
フェルトセンスと一緒にいる方法
カウンセラーがフェルトセンスと一緒にいるように促すと、これまで「なんとなく」「ぼんやり」「よくわからない」と語られていたフェルトセンスが、すこしずつ明確に見えてくるようになる。
ここで大事なのが、感じてみてどうですか?とカウンセラーが感想を聴くことである。目に見えないフェルトセンスについて言語化していくことでより一層明確になる。
しばらく一緒にいてみましょう
静かに感じてみてください
そこにいさせてあげてください
Point
カウンセラーがクライエントに、フェルトセンスと一緒にいるように語りかける時のポイントは、無理強いはせず、優しい口調で語りかけることである。
フェルトセンスに語りかける準備
体外にフェルトセンスを出したほうが、話しやすい事が多い
①一時的に嫌な気分から少し解放された気分を味わえる
②自分の辛い感情から少し距離が取れ、客観的な視点で捉える事ができる
③対話する時にイメージがし易い
フェルトセンスを体外に取り出すのが難しいときは
体内にいるイメージのまま、対話を始める
幽体離脱をするようなイメージを持ってもらい、外に取り出す。
Point
フェルトセンスと対話する前に、フェルトセンスを体外に出しておくと、対話しやすくなる。イメージを上手く利用して、対話しやすい環境を作ること。
フェルトセンスと対話する
①フェルトセンスと語りやすい環境準備
体外に取り出したり、体内で静かに語り合えるような状態をクライエントに体感してもらう。
②客観的に眺める
体外に取り出して、これまで自分の内面にあった物を客観的にみて、どうかをかんがえてもらう。
③しばらく一緒にいる
しばらく一緒にいる感じを体感する。カウンセラーは、「一緒にいても大丈夫かどうか?を確認しつつ、フェルトセンスに変化がないか様子を探る。
④ハンドルをつけ、共鳴させる
取り出したフェルトセンスにふさわしい言葉やイメージを、呼び名をつける要領で探してく。ハンドルが思い浮かんだら、フェルトセンスにはまるか問いかけ、ピッタリくるかどうか試してみる。
⑤触ってみる
フェルトセンスと一緒にいて大丈夫そうだったら、触れてみるイメージを持ってもらう。そして感想を聴く。
⑥対話を始める
クライエントに、フェルトセンスに「あなたは何?」と語りかけてもらう。クライエントに無理のないように、様子をみながらすすめていく事が重要である。
フェルトセンスと対話するクライエントの心情
「不安」「恐怖」「疑問」「ドキドキ」
Point
カウンセラーは、フェルトセンスとクライエントの心理的状態に注意しておく。クライエントが辛くなっていないか気にかけ、負担が強いようであればストップさせ休憩させること。
フォーカシングの終わり方
フェルトセンスと対話を深める方法
なにか話したい事があればどうぞと語りかけてみてください。
メッセージみたいなのは伝わりますか?
なにか言ってきますか?
優しく包み込むようなイメージで語りかける事
フェルトセンスと対話が進みクライエントにあらわれてくる変化
<泣く><語る><モヤモヤが深まる>
どんな変化が生まれても、その変化を受け入れ、純粋に感じる事が大切である。
フォーカシングを終える頃には…
対話したフェルトセンスに挨拶とお礼を伝える
その後は、フォーカシングを体験した感想だけでなく、それにどんな意味があるのかという解釈を、クライエントから聴き取り、カウンセラーが傾聴していく。
Point
フォーカシングを終えたあとの感想や、フェルトセンスの語りかけの意味の解釈を傾聴する姿勢は、とても重要である。どんな状態で終わってもいいので、その時感じられたところまでをしっかりと共有し、話し合う事。
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