雷神は「とよむ」
ずっとわからないでいた「豊」という字の表す意味。
「豊(とよ)」は雷鳴の音のことでした。
日本書紀の3番目にでてくる豊斟渟尊(とよくもぬのみこと)。岩波文庫の『日本書紀(一)』の補注を見たら、「豊」のトヨはもと擬音語。鳴りとよむ音を擬した語であると。
「鳴り」とはつまり「かみなり」。雷鳴の音を表しています。トヨはたぶん濁ってドヨ!ドン!という雷が落ちた時の音でしょう。
ということは、
「豊」という字は、雷鳴で、雷で、稲妻で、稲光で、稲とつながり、伊勢神宮外宮の豊受大御神は、豊を受ける=雷を受ける田となり、お稲荷さんに一直線につながってゆきます。
そして『日本書紀』神代上の冒頭には、『古事記』の物語がスタートする時点以前の物語が示唆されていました。
日本書紀では「一書曰く」の記述が続いて、「豊斟渟尊(とよくもぬのみこと)」のまたの名として「浮経野豊買尊(うかぶのとよかふのみこと)」となり、その立ち位置が「高天原」の天御中主尊・高皇産霊尊・神皇産霊尊の三神に置き換わってゆきます。
万葉集の「雷神」を詠んだ柿本人麻呂の歌
雷神(なるかみ)も少しとよみてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ
雷神(なるかみ)の少しとよみて降らずともわれは留らむ妹し留めば
巻第十一 2513、2514