中国の玉(ぎょく)とルイ・ヴィトン
ずっと太古からそして今でも、玉(ぎょく)は中国人にとって、とても特別なもの。
もう16年ほど前になりますが、表参道のルイ・ヴィトンの2階の階段をあがったところのショーケースに、薄いピンク色のファー(たぶんラビット)に白い革のベルトが付いた小振りのバッグを見つけました。
まあそれだけでしたら、当時流行していたよくあるデザインだったのですが、革のベルト部分にびっしりとお行儀良くさまざまな色の玉(ぎょく)が嵌め込まれていたのです。どれもピンクのファーの色になじむクリーミィな色の玉たち。確か数十万していたと思います。
その頃、表参道にはGAP、ZARA、シャネル、ヴィトン、ギャルソン、プラダ等々、ブランドの大きなショッピングバックを抱えてTシャツ姿で闊歩する中国人観光客が増えてきた頃で、「このバッグ、あの人たちが見たら、たまらないだろうなぁ。」と思ったことを思い出しました。
その源流を先日目撃しました。
16年前に見たヴィトンのバッグの玉の色!
【細石刃】
東京国立博物館(東洋館)
中国内蒙古自治区ホロンバイル地方出土品
(新石器時代・前7000年〜前3000年頃)
【細石刃】カミソリの替え刃にも似た小型の石刃。骨や角で作られた槍の側面に溝を彫り、そこに複数の細石刃をはめ込んで使われていたようです。刃こぼれした際には、新しい細石刃と交換できるという、それまでにない利点がありました。
(東京国立博物館・東洋館の説明より)
日本の石器時代の石の出土品はどれも墨のような灰色のグラデーションなのに、9000年前の北方の中国の新石器時代は、石刃さえもこんなに可愛い色の石でつくっていただなんて。。
日本の玉も大陸からの影響を受けた勾玉があったり、平安時代(源氏物語の頃)には、殿上人の「束帯(そくたい)」という装束にもちいられた石帯(せきたい)という玉が嵌め込まれたベルトがありましたが、その玉石は大陸からもたらされたもので、その後の時代にかけて、日本人は宝石で身を飾ることには向かいませんでした。
それは、日本では色が綺麗で丸く加工のしやすい多様な石が採れなかったこともあるのかもしれません。日本の石を代表する翡翠も日本のものは「硬玉」と呼ばれ、硬く眩しく輝きますが、中国の翡翠は「軟玉」と言って、潤い感がありしっとりとした質感です。
海に囲まれ、火山の多い日本列島では、大陸からの玉石はますます貴重になる一方、希少だけど自国で手に入る「白珠」、すなわち真珠や水晶がありました。
そして平安時代以降は、「たま」といえば、蜘蛛の糸や葉っぱにかかる白露をイメージするようになっていきました。
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