『下界の神様奮闘記』第4話「出会いと別れ」

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天界では下界のように、たとえば3月で辞める、4月から入社する、などといった通例はなく、退神や入神のタイミングは存在しない。
 つまり、毎日のように退神、入神が発生する。

今日も誰かが退神するようだ。あの神様は、確か神村さんだったっけ。
 神村さんとはあまり話したことがないのでよく分からないが、上からも下からも慕われていたと聞く。飲むことが好きで、天界にある飲み屋はほとんど通ったんだとか。あ、そういえば俺も一度誘われたことがあったんだっけ? その時は残業で行けずに断ったけど。

どえらい量の花束を貰っているあたり、かなり慕われていたのだろう。俺が退神する時もあんな感じなのだろうか? いや、俺は情に流されない冷たい性格だし、愛想良くも出来ないから、それは無いだろうな。

退神する神もあれば入神してくる神もいる。

今日は区域担当神の専門学校を卒業したばかりの若手が、俺の担当する区域に入ってくるという。
 天界では若手の指導も大切な仕事の一つ。若手を育てていくことに重きを置いているためか、特に若手のミスに関しては厳しく、指導を担当する神様の責任となる。時には責任を取らされて、下界に落とされることもあるそうだ。

正直に言えば、俺は指導をすることが苦手である。愛想良く出来ないし、何より指示を出すのが苦手でならない。
 逆に放任主義でやりやすいと言ってくれる若手もいるが、基本的にそのやり方は、特に今の若手からは好かれない。
 それを上が知ってるのか知らないのか、若手指導に俺が入ることは滅多にない。これは極力責任を取りたくない俺からしても好都合だ。

「ちょっとみんな集まってくれ。新しい若手を紹介する」

神谷チーフが呼んでいる。一体どんなやつが来たのか楽しみだ。

「今日から入神する神楽くんだ。初めてで分からないこともいろいろあるだろうから、気にかけてやってくれ。くれぐれもいじめちゃ駄目だぞ」

「今日から入神しました、神楽です。天界に少しでも貢献できるように頑張ります、よろしくお願いします」

なにやら真面目そうなやつが入ってきたな。真面目なやつや、性格の優しいやつというのは、とりわけ情に流されやすい。こいつも情に流されなければ良いが。まぁ数ヶ月もすればだんだん慣れてくるだろう。

「指導は、そうだな……。神山、お前に頼む」

指導は俺か。え……、俺?


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