『下界の神様奮闘記』第2話「神様のお仕事」
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神様には数多の種類が存在する。唯一神だとか、あるいは火の神だとか水の神だとか。とりわけ、日本という国には八百万の神がいるという。
それとは別に、下界に最も近しい神が存在する。それが「区域担当神」だ。
世界各国、それぞれの区域に割り振られた神様がいる。ここ日本でいえば、都道府県や市町村別のそれぞれに、この区域担当神が割り振られている。
この区域担当神は、勤続年数や地位によって任せられる場所が決まる。たとえば下界でいうところの部長クラスなら、東京の渋谷、大阪の難波、福岡の博多といった大都市を任されるが、反対に区域担当神1〜2年目の若手であれば、地方の比較的人口が少ない区域を任せられることになる。
では、この区域担当神は、割り当てられた地域で何をしているのか。
まずは日常業務。たとえば、担当区域の天候を決めたり、担当区域に住む人や動物等の運勢を決めたりしている。
天候は地球の自転や公転、太陽との位置などで決まっていないし、運勢も普段の行いや偶然などで決まっていない。全てはその区域の区域担当神が「気まぐれ」で決めているのだ。
区域担当神が業務を行うに当たって最も重要視されるのが、神様としての信頼を構築すること、そして業務に「情を入れてはならないこと」である。
下界の人間が事あるごとに神頼みをするように、神様は崇められる存在でなければならない。
さらに、天界での業務は、降らせる雨の量や下界の生き物に与える運の量などを区域ごとに調整したり、担当区域の下界の様子を逐次報告し合ったりと、神様同士の阿吽の呼吸で成り立っている部分もある。
故に、下界とはもちろん、天界においても神としての信頼を構築することは重要となる。
また、この区域は最近雨が少なく苦しんでいるからそろそろ雨を降らせてあげようとか、この人は良い人だから運勢を良くしてあげようなどと、業務において情に流されてはならない。なぜなら運命は成り行きでなければならないからである。神様が雨を振らせたいなら降らせるし、運を上げたり下げたりしたいなら随時行う。そこには善意も悪意も、また情が入ったりもしない。
このように、神様の業務は気まぐれであり、そしてあくまでも成り行きである。だから、毎年のように大雨や干ばつに苦しむ区域が出てくるし、病気に病気が重なってしまう人もいる。
神様は「乗り越えられる試練しか与えない」のではない。「乗り越えられない試練も普通に与える」のが神様なのだ。
そして「区域担当神」の一番重要な業務。それは担当区域に住む人に「天罰を下すこと」である。当然、この「天罰を下すこと」に関してももちろん、情に流されてはいけない。
下界における裁判においてもそうであるように、裁判官は情に流されず、公平な判決を下さなければならない。
その点、神様は下界に対する天界の裁判官のようなものであり、神様が下した結論が、下界での結論に直結するようになっている。
つまり、下界の裁判においては最終的に人間の裁判官が判決を下しているように見えるが、実際には「神様が下した結論」を裁判官が代弁しているに過ぎないのだ。
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