読んだ小説を褒めながら紹介するnote ~『声優ラジオのウラオモテ #01』篇~
なんとびっくり。
読了報告あるいは書籍紹介のしっかりとした記事は半年以上書いてませんでした。
……ま、実際読んでもいなかったので書きようがなかったわけですが。
それでもまた最近読書ができはじめているので、せっかくだから書いてみた――的な流れです。
それほど大容量とはならない予定なので気楽に見ていってください。
あと、あらすじは紹介しても本当に序盤程度で、最終オチまでは書きません。なので、この記事を読んだ皆々様は、ぜひその本をお買い上げの上、楽しんでいただければと思います。
ウラオモテ、ってどういう意味合いなのかなと思って読み始めました。
思ったよりウラオモテのある話でした。
それがまたとてもかわいらしく、だけど決してそれだけでは済まない、夢といっしょに働く女子高生の青春群像エンタテインメントです。
『声優ラジオのウラオモテ』シリーズ #とは
端的に言いましょう。
受賞作品です。
第26回電撃小説大賞の、栄えある大賞作品です。
つまり、作者の二月 公《にがつ・こう》先生、デビュー作です。
イラストは『カノジョの妹とキスをした』などでも表紙・挿絵を担当するさばみぞれ先生です。
電撃小説大賞(以前は「電撃ゲーム小説大賞」という名前でした)。
ライトノベル系新人賞では最大手のひとつで、"one of the most popular" という表現が適切でしょう。
受賞作品見ると、まぁ有名どころになったシリーズや作家だらけ。
『ブギーポップは笑わない』(上遠野浩平)、『塩の街』(有川浩)、『アクセル・ワールド』(川原礫)、『博多豚骨ラーメンズ』(木崎ちあき)、『君は月夜に光り輝く』(佐野徹夜)など。※すべて敬称略
そんな群雄割拠な世界を2019年に勝ち抜いた作品こそ、この『声優ラジオのウラオモテ』シリーズです。
『声優ラジオのウラオモテ ♫#01 夕陽とやすみは隠しきれない?♫』
そんなシリーズの第1巻。
元気カワイイ系なまだまだ若手(3年目)のJK声優・歌種やすみ《うたたね・やすみ》と、おっとり系の正統派アイドルJK声優・夕暮夕陽《ゆうぐれ・ゆうひ》のWEBラジオである『夕陽とやすみのコーコーセーラジオ』のオープニングから始まります。
かわいらしい掛け合いから始まるんですよ。ええ、まぁ。
※判読性のため、やすみのセリフには「や」、夕陽のセリフには「ゆ」を付けてみます
ゆ:「この番組は、偶然にも同じ高校、同じクラスのわたしたちふたりが、皆様に教室の空気をお届けするラジオ番組です!」
や:「おー。ユウちゃん、最近はすっかりその挨拶も慣れてきたね!」
ゆ:「そんなことないよぅ。毎回噛み噛みだよ~。やっちゃんは? このラジオ、もう慣れた~?」
や:「いやぁぜんぜん! 不思議な感覚が抜けなくて困っちゃう! 慣れないよー!」
や:「お仕事って言うより、休み時間みたいだよね!」
ゆ:「教室でおしゃべりしてるときと、あんまり変わらないよねぇ~」
……。
…………。
ね。
聴いてる限りはそう思うわけですよ。
……聴いてる限りは。
ところがどっこい。
――インターバル挟んでる間、マイクが切れているときはこうですよ。
や:「……あー、あんたとラジオやるの、ぜんぜん慣れないわ」
ゆ:「……そうね、わたしもそう思うわ。ぜんぜん慣れない」
や:「だいたいさぁ、根暗な渡辺と夕暮夕陽でキャラが違いすぎるんだって。『そんなことないよぅ』なんてよく言えるね。ふわふわーっとしたしゃべりを聞くたびに、ぞわっとするんだけど」
ゆ「それはお互い様でしょうに。どうして佐藤みたいな頭の悪そうなギャルから、歌種やすみの元気でかわいい声が出るのよ。ちょっとしたホラーなんだけど」
……。
…………。
……。
…………。
んんんんん!?
ということで、真実なのは「このふたりのJK声優が、同じ高校の同じクラスに所属する」ということだけ。
実際の所、クラスでの絡みはゼロ。
特段仲が良いとかそういうことですらなく、むしろ険悪さすらあるレベル。収録のときの和気藹々っぷりの反動か、マイクが切られればすぐに罵倒の応酬と、まぁ若いふたりは血気盛んなわけでございます。
あと、ふたりとも声優としてキャラ付けがされているだけで、真の生態はその反対。
元気カワイイ系の歌種やすみは、メイクをがっつり欠かさない今時のギャル、本名は佐藤由美子。
おっとりアイドル系の夕暮夕陽は、毒舌根暗な攻撃的陰キャ、本名は渡辺千佳。
まぁ、ね。実際ここまで対称的な女子高生、同じクラスでも教卓の近くに陣取ってガヤる佐藤に、教室後ろの窓側あたりで黙々と本でも読んでそうな渡辺――そんな構図が目に浮かぶようです。絶対に絡まなさそうですもの。
いやぁ、真実が知られたら、ヘタをすると大暴動が起きかねませんなw
ま、アイドル稼業なんてそんなもんでしょうけどw
何でこんな流れになったかと言えば、「元からあった企画が潰れちゃって、致し方なく考えた代用案が意外にも良さげだったから動かしてみた」という、放送作家の気まぐれサラダみたいな企画が原因。
そろそろ身の振り方すら考えなくちゃいけないとかいう、わりと瀬戸際状態だった歌種やすみが、久方ぶりのレギュラーワーク――ただしパートナーは自分と同様に現役女子高生の声優(相手の方が人気などで格上)=夕暮夕陽――を手にして喜んでいたら、その相手は同じクラスの陰キャ女だったわけで。
しかし互いにシゴトに文句を言える立場じゃないこともあって、「ON AIR」の時だけは仲良しを装いながら、オフレコのときはその反動で言い合いをする流れに……。
総評的なアレ
いや、ホント。
どアタマから惹きつけますねえ、この展開。
やっぱり序盤の引きが強い物語はそれだけでそのまま読者を最後まで牽引する力があるものです。
この作品はまさにそれ。
「夢を売るシゴトとは、得てして現実と向き合わねばならない時が往々にしてある」、そんなエピソードもあったり(ここ、ポイント。甘いだけじゃないのが良い)。
大丈夫かよこいつらとヒヤヒヤさせられつつも、実はふたりともしっかりと持ち合わせているプロ意識でまことアンバランスながらも乗り越えていく様は、さながら「犬猿のバディ」の様相があって、かなりのエンタテインメントでございます。
その後、第1巻は。
精肉店のコロッケがラジオの話題になって一悶着起こしてみたり。
公開録音やら円盤のリリースイベントで事件が起きてみたり。
親睦を深める――というわけではなく、「放送中に言っちゃった手前、ウソのままじゃ気持ち悪いから」的なことでお泊まり会をしてみたり。
そして、ヤバイことが起きてみたり――。
――そんな、盛りだくさんの内容でお送りされます。
読み応えバツグンです。
この後どうなっていくことやら。
ぜひ。
ちなみに。
2020年2月に第1巻が刊行され、既刊は4巻。
そいでもって、2021年7月に第5巻がリリースされます。
楽しみですねぇ。
※2021/07/14 追記
第5巻、発売されました。
買いました。
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