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おさらいの時代 その4 地中海へ

 BRUTUS誌の地中海特集は、僕にとっても楽しく、ある意味人生に大きな影響を与えてくれる取材旅行となった。

 この取材ではカンヌ、ニース、マルセイユなどの南仏の都市や、カップ・ダグド、サントロペなどのリゾート地、さらに足を延ばしてモナコ公国、さらにはイタリア国境を越えたヴェンチミリアなどで、地中海世界の豊かさや文化の奥深さを、ヴィジュアル雑誌というスタイルで紹介する良い機会となった。

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 ムーア人の攻撃から逃れるために、山の上に作られたレ・ボーの町やアルルも素敵だったが、やはり特に印象深かったのがカマルグの大湿地地帯の自然の豊かさと、サント・マリー・デ・ラ・メールの町の教会に祭られている、マリア様の祭礼の日のことだった。

 ナザレのイエスが磔の刑に処された後、マグダラのマリアをはじめ、マリア・サロメ、マリア・ヤコベ、そして従者ノサラ、マルタ、ラザロたちは小舟に乗ってエルサレムから脱出したのち、このカマルグの土地に流れ着いたという。

 そのうちのマリア・ヤコベとマリア・サロメが、従者のサラとともにこの地にとどまり、礼拝堂を作ったと歴史は語る。


 時を経てここに教会堂が建てられマリア信仰の中心地となったのだが、興味深いのは従者であったサラを祀るのに黒い肌のマリアの像があり、そのサラがロマ=ジプシーたちの守護神であるため、毎年5月と10月に執り行われるマリアの祭礼の日に、ヨーロッパ各地からロマの人々が大挙この町にやってくることだ。

 ロマの人たちは町の空き地にキャンピングカーなどを停め、祭りの間集落をつくり、そこで火を起こしてロマ風の焼肉料理などを作り、またギターなどの楽器を鳴らして、みんなで踊ったりして、祭りを楽しんでいるのだった。

 土地の老人に聞いたところによると、離れ離れで暮らしているロマの人たちにとっては、この祭りなどは嫁とりの良き機会なのだそうで、そういえばロマの娘たちはいかにもセクシーないでたちなのだった。

 この特集のカメラマンは、まだ大学に在学していたころの三好和義君で、特集の少し前に知り合ったのをきっかけに、その才能を見込んで編集部に紹介し、取材旅行に同行してもらったのだった。いわば彼の本格的デビューを飾る仕事だったはずだ。

 メインのショットは彼に任せたが、マリア像が海に向かうとき、僕は違う角度からそれを撮影しようと、急いで教会の屋根にのぼった。

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 カマルグの白い馬に乗ったガルディアンたちや、多くの市民、そしてロマたちの群衆が密集する瞬間は迫力があった。

 ガルディアンというのは、僕思うにアメリカのカウボーイの先祖のようないでたちの人々で、カマルグの野生の馬などを管理している人々である。

 テンガロンハットのような帽子に、デニムのような厚手の木綿のパンツ、ソレヤードのプリントシャツなどが彼らのファッションなのだった。

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