その本に覚悟はあるか?
高校生のとき、お小遣いをもらえなかった。
通学に使っていた原付のガソリン代はおそるおそるお伺いを立ててその都度もらう。親の機嫌が悪いときはもらえなかったり、機嫌を伺っているうちにガス欠になって、地元で「どんぶり坂」と呼ばれる高低差がものすごい坂を原付を押しながら2つ越えたこともある。
お弁当なんて作ってもらったことがない。そのくせ、お昼ごはん代もくれなかったので自分で作らない限りお昼ごはん抜きの日がほとんどだった。
調理科だったから料理はなんとなくできたけれど、毎日部活でくったくただったので早起きしてお弁当を作ることなんてほとんどできなかった。
そんな家で育ったので、単価が1,000円を超える本やCDは買えなかった。それでも音楽は大好きで、週末にラジオでやっているヒットチャートの番組をMDに録音したり、ガソリン代が余った時にレンタルCDを借りて録音して何度も何度も聴いていた。(経済ぶん回せなくてごめんなさい……)
レンタル品だったとはいえ、1枚のアルバムを何度も何度も大事に聴いていたあの頃に比べたら、今はなんて便利な世の中になったんだろうと思う。
でもだからこそ、最近の曲は1曲1曲が軽いというか、すぐに流れて忘れ去られているような感じを受けることがある。いい意味では「たくさんの曲を浴びるほど聴ける」のだけれど、なんかそれ、ちょっと寂しい。
本にしてもそうだ。
読んだらすぐフリマアプリでかなり安価で売り飛ばされているのをよく見かける。買っていただけるのはありがたいけれど、ずっと本棚にいてほしい、何度も読み返したくなる本を置きたいと思っているから、るーこぼんに置いている本と同じ本を見るとズキッとする。
大型書店にもよく行くのだけれど、ビジネス書の棚はものすごく代謝が激しくて追いつけない。でも、同じようなサイクルで流行りのビジネススキルがぐ〜るぐるしているのを感じて、前に出たほうのあの本はどうなったのかな……といらない心配をしている。
そんな中、絵本やアート、エッセイなんかの棚はゆったりとした時が流れていて落ち着く。ちゃんと待っていてくれるという安心感もあるし、何年も前に出た本なのにキラッと光って語りかけてくれる本もある。もちろん、少しずつ新しい本も入ってきている、そんな棚が私は好き。
「本を出したいんです」という相談をよくいただくのだけれど、私はいつもZINEを作ることをおすすめしている。
いろんなミラクルが起きて大きな出版社さんから出せたとしても、使い捨てのコマのようにされるどころか棚にさえ並べてもらえないこともある。
「○○社から出版した著書があります!」という肩書きや話題がほしいだけなら何も言わないけれど、しっかり思いを伝えたい、自分の出した本で人の役に立ちたいと心から思うならはじめはZINE一択だと思っている。
何百年も、何十年も読み継がれているような本はみんなそうして作られてきたのだから。
本当に良い本だったら、意志を持ったすばらしい出版社さんが必ずチャンスをくれる。あなたの人柄に、生き様に、心を打たれて応援したい! と思ってくれる人が必ずいる。
そして、そういう本はかならず誰かの本棚でずっと大事にしてもらえる。
本を買う時はいつも、本棚でずっと大事にしたい本を買おう。