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【読書ノート】『最後は臼が笑う』

『最後は臼が笑う』
森絵都著


「人間は完璧ではなく、けれどそれが魅力だ」と桜子は理解している。彼女は、妻子持ち、借金持ち、変わった性癖を持つ男たちに繰り返し騙され、傷つけられても、彼らの中に見つけた一点の"愛しいところ"のためにすべてを受け入れる。彼女にとっての"愛しいところ"とは、居酒屋で注文するとき、メニューの漢字を読めない高慢な男や犬に声にびくつく野蛮な男だったり、彼女が、虫刺にされたことに気づいて搔いてくれたりする冷血な男たちが、一瞬見せる弱さや優しさだったりする。ところが、そんな桜子に、真の悪人が現れるという話。

なかなかわけのわからない話なので、いくつかキーワードを上げてみる。


①猿蟹合戦
人間の欲望や争いの無駄さを象徴し、努力や協力の重要性を教える物語と解釈されている。また、物事を客観的に見る視点や、傲慢さや争いを避ける智恵を持つことの大切さも示唆している。

②ダメな男に惹かれる女性
「存在の欠如に対する欲求」や「自己成長の動機」と解釈できる。ダメな男に惹かれる女性は、彼を改善し、成長を見届けることで自己の価値を高めるか、あるいは自身の欠陥を補う手段として彼を見ることがある。これは、人間が完全性を求め、不完全なものに魅力を感じる哲学的な傾向を反映している。

物語の主題は何か?
真の悪人ってどういうやつなのかということなのだと理解した。

表面的な悪人の中には、愛すべきところがあるらしいのだけど、八郎には、愛すべきところが見出すことができなかった。

八郎は、電車で、紳士の如く、席を譲るのだけど、高齢者というわけでもなく、若い範囲にも入らない中年を越えた女性だけをターゲットにして、彼女たちを高齢者扱いして、戸惑う姿を楽しむというもの。

善の形を装った悪≒文字通りの偽善者というのが、もっとも悪い奴だということだと思った。

本物の善はどこまでも善なのだけど、悪は姿を変える。なかなか、哲学的な考察だと思った。

そして、最終的には、正義は勝つ。

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