二人のドライブ

「来てくれてよかったですよ。私一人じゃどうしていいか分からなくなるところでした」
運転席の彼は、笑顔でいった。

後部座席にはインターンシップでうちの会社にやってきた弾けそうな女子大学生。担当を押し付けられたのは人のいい後輩の彼。
アラフォーの男性一人で、女子大生5人のお世話は大変だ。

「今日、一緒に行ってもらえませんか?」
彼が、いつもになく気弱にお願いして来た。
「しょうがないわね。お付き合いしましょう」
内心、ニンマリしていた。
彼と一日中、ドライブするチャンスなんて滅多にない。

後部座席では、彼女たちの内輪の話で勝手に盛り上がっている。
私たちも、たわいもない話をした。
仕事のこと、趣味のこと、学生時代のこと。
彼の話は面白い。興味がなくても、いつの間にか引き込まれる。
話す彼の横顔に吸い寄せらせる。
若者の甲高い声をBGMに、車は走る。

「そうそう、この間うちの嫁さんがね」
ああ、その話は聞きたくなかったよ。


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