【WGAC2021】GCACWのプレイにソ連の作戦術を落とし込もうとした試み
この記事はWar-Gamers Advent Calendar 2021の12/21のエントリー記事です。(https://adventar.org/calendars/6896)
私は今年GCACWのプレイにソ連軍の作戦術の概念を持ち込むという取り組みを行っていました。今回は、その動機、私のソ連作戦術の解釈、実際にどのようにプレイに落とし込んだか、そして一年を通しての感想をまとめます。
動機
GCACWにどハマりして2年目の2021年3月、私はプレイ動画の作成にも挑戦していましたが、実は「このゲーム、何がなんだか全然分からないぞ…」という悩みを抱えていました。
他人とプレイして勝ったり負けたりしても、自分の何が良かったのか、悪かったのかが分からず、プレイを通じての技量の成長が無いように感じていました。
一番よく分からなかったのは自分が攻撃側を受け持つ長めのアドバンスシナリオのときです。
ゲームに勝つための私のセオリーは、「まず敵を思い切り全力でひっぱたいて、うまくいったら徹底的に追撃して自分の優位を確実にする、その後またさらに強い力でひっぱたく」というものです。
しかし、GCACWの場合、最初の一撃の時点でこちらの攻撃側ユニットが戦闘結果の損失と疲労度アップで息切れして動けなくなってしまうため、スムーズに追撃へ移行できません。結果、立ち直って元気になった敵をもう一度叩かなければならず、再び運試し。当然いつかは攻撃が失敗し、全ての戦線が停滞します。このような悪循環が続いていました。ショートシナリオでは上記の方法でも悪い目が出る前に圧し切れることもありますが、ちょっと長めなシナリオやアドバンスシナリオにそれだけで勝利することはほぼ無理です。
JdGやEaglesのようなナポレオニック会戦級のゲームばかりやっていた私は、「追撃がまったくうまくいかない」ことがかなり衝撃でした。50年前の欧州で私を助けてくれた騎兵はこの世界では私を助けてくれません。
できる限りの人事を尽くし、あとは運に任せて身投げをする、その営為が好きな私にとってこの現状は耐えきれないものでした。単なる運試しを何度もすることはスリルが薄まる気がして好きではないのです。
解決策の模索
もっと大きな戦闘修正を!
改めてルールを眺めると、攻撃を成功させるために最も手っ取り早い方法はなるべく高い戦闘修正を手に入れることだと思いました。包囲効果のルールを再度勉強したり、強行軍を使用したときに得られる移動力の期待値を計算してみたり、戦闘結果の確率が分かるアンチョコを作成してみたりなどしてみました。しかし、当然ながら防御側は高い戦闘修正が立たないような位置に布陣しますから、戦闘修正の計算が早くなった以外にあまり効果はありませんでした。
歴史を探る
ゲーム上でアイデアが尽きたら、その元ネタを探るときです。何冊か南北戦争の本を読んで何かヒントがないか探しました。
南北戦争は死傷者がアメリカ合衆国史上最も多い戦争ですが、その原因として「ナポレオン戦争式の戦術」というキーワードが、目を通した資料のなかではよく挙げられていました。
会戦級と作戦級という違いはありますが、JdGやEaglesではとりあえず敵の戦列を壊す必要があり、軍隊が先、都市は後というイメージでプレイしていました。最優先は先ほどのループを回すことです。ユニットも2ステップしかもっていないので除去しやすかったですし。
しかし、GCACWでユニットが除去されるのは文字通り戦力が0になったときのみであるため、戦闘に負けたユニットもしぶとく盤上に残り、山や丘や森や塹壕で新しい抵抗拠点を作り上げてしまいます。軍隊が先、都市は後という今までの方式は、いつまでたっても軍隊が潰し切れないこの世界では通用しない手段だと段々と気付いてきました。
ソ連作戦術との出会い
ではどうしたらより満足のいく形でゲームがプレイできるのか。私は今までナポレオニックゲームの考え方でプレイして失敗し続けていました。なら、逆にもっと先の時代の考え方を導入できれば何か掴めるのではないだろうか。私はすぐに思いつくものがありました、南北戦争と同じように広大な大地で行われた内戦のロシア内戦と、そこから生まれた近年目に触れる機会の増えたソ連赤軍の「作戦術」という考え方です。
早速ソ連赤軍の作戦術についての本を読み、私の悩みとその解決法が言語化されていたことに驚愕しました。それはつまり、「単一の会戦の勝利は戦争の終結を保証しない。だから、連続して会戦を挑み、敵を絶え間なく打撃する必要がある」ということです。「大きい戦闘修正を集めた個々の戦闘結果の単純な総和と、作戦・戦役の成功はイコールでは繋がらないため、全力で単一の会戦に勝利することにはあまり意味がない。それよりも連続して会戦を挑める体制を作り出すことのほうが大切だ」というメッセージをはっきりと受け取りました。
作戦術を落とし込む
ソ連赤軍の作戦術の本は私に素晴らしい教えをくれましたが、それをそのまま活用することはできません。いま私がいる世界には戦車や航空機はなく、砲兵も射程がないので、敵の縦深を全て同時に打撃するということはリーやグラント、シャーマンが機械化されない限り不可能です。
機械化されたシャーマン
しかし、単一の会戦に全力を注ぐのではなく会戦と会戦をつなぐことを重視するという考え方を利用することは可能です。そこで、私はゲームの勝利を考える戦略、会戦でどうやって戦うかの戦術、それらをつなぐ作戦の3つの階層とその役割を規定し、プレイ中自分がどの次元で考えているのかハッキリとさせることにしました。
戦略
戦略の役割は、どうやって勝利得点を稼ぐかを考えて、自分のユニットが進む方向を決定し、いつどのヘクスにいればいいかを決めることです。
どうやって勝利得点を稼ぐかは、以前の記事で紹介した勝利得点の点数とそれを達成する難易度を分布したマトリックスと勝利得点の条件を数式化することなどが有効でした。ここが決定すればあとは利用可能なターンとユニットからいつどのヘクスにいればいいかという作戦に与える短期目標が自然と生み出されます。
作戦
作戦の役割は戦略から受け取った短期目標をどうやったら達成できるかを考えて、複数の戦闘を組み合わせることを前提に、下位概念の戦術に使用可能なユニットと必要な戦闘修正を伝えることです。ユニットの仮置き用のポーカーチップや戦闘結果確率のアンチョコ、移動力期待値の表を使用します。
ひとつの作戦が統括するは2ターンから3ターンで、例えば、5個のユニットが戦線を構築しているときに、どのユニットを使ってどこから攻撃していくか、その戦闘修正はいくつか、攻撃が成功したら次はどれを攻撃するかということを考えます。
GCACWでは敵を退却させたいのか、潰走させたいのか、疲労度を上げたいのかによって必要な戦闘修正が異なります。退却させたいのであれば+2の戦闘修正が欲しいですが、疲労度を上げて足を止めたいだけだったら-1や-2でもかまいません。ポイントは最低限必要な修正をハッキリとさせることです。+2の修正で十分なのに貴重な活性化回数を費やしてさらに大きな修正を求めにいくことが有益なのかを判断して戦術を司る私に伝えます。
もちろん、迂回して移動するだけで短期目標が達成できるなら、戦闘は行いません。メインはどうやったら短期目標を達成できるかという点です。
ひとつの短期目標を達成できたら次の短期目標を目指します。ユニットに休息が必要であればひとつの作戦が終了してから休息します。作戦中はよほど余裕がない限り休ませません。
戦術
戦術の役割は作戦から与えられた目標の戦闘修正の数値を、使用可能なユニットの制限のなかで、いかに達成できるかを考えることです。基本的に作戦から戦術は一方通行ですが、どう考えても厳しい場合は作戦に対して見直しを迫ります。ひとつの戦術は1ターンから1回の活性化を統括します。
この領域ではいかに高い効率で目標の戦闘修正を達成できるかということで評価をします。作戦の項で、必要以上に大きな戦闘修正は必要ないと述べましたが活性化回数が同じでより大きい戦闘修正が手に入るなら迷わずそちらを行います。
感想
取り組みだして最初にかなり手ごたえがあったのは6月に行ったAGAのアドバンスシナリオのプレイでした。このとき私は北軍を担当して「南軍の援軍が来る前に、マナサスジャンクションに対して+2の戦闘修正でダイスを振ることで勝利する」という戦略を定め、予想される敵の防衛線をどうやって乗り越えていくかの作戦を計画し、戦術は粛々とそれを実行しました。
勝利という結果が出たことも嬉しかったですが、ゲーム後に自分でどこが良かった悪かったという点を反省しやすかったことが何よりも嬉しかったです。またゲーム中に戦役が上手く進んでいるかどうかを評価できるようになったことも良い点です。短期目標が達成できていればOK、達成できていなければだめ。非常に分かりやすいです。
このような考え方をするようになってから、このゲームの細かいルールが自分のなかですっきりと整理され、よりゲームを楽しめるようになりました。これはどうにもならない運の部分、これは自分のせいという線引きができるのでとても気が楽です。
今回の記事では、今年取り組んでいたGCACWへの作戦術の導入という取り組みをご紹介しました。やりごたえのある懐の深い、楽しいゲームに巡り合えたことに感謝します。
皆さんに栄光の日々がありますように。
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