【ショートショート】サラダバス　工作員ヤンの潜伏記（４０９字）

「オ客サマ、カユイトコロ、アリマセンカ？」

ヤンは蒸気の籠もったサウナの一角の部屋で、客に聞く。

手にしたヘチマタワシで、中年のおやじの背中を擦る。

「オイルハ、ヒマワリ、オリーブ、ドチラニサレマスカ？」

施術の仕上げは、オイルマッサージである。

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コンビニの事件の後、求人でみつけた仕事、サラダバスの施術士。

経験不要、留学生も可。北欧発の新しいスキンケアで、アンチエイジング効果あり。サウナで整った後に、ビネガー漬けの生野菜のバスに浸かりマッサージを受ける。

深夜１時の終業後の清掃が生野菜が生臭く嫌だったが、かつて黒龍半島で受けた蟹にまみれてのサバイバル訓練に比べたら、なんのことはなかった。

このサラダバス、永田町にあるからか政治家の利用も多い。今後の任務で役に立つかもしれないとヤンは思った。

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深夜、仕事を終えての帰宅途中、コンビニに寄って、好物のおでんを買う。いつくるかわからない指令のことを思いながら、ゴボウ巻きを齧る。