築地デスの罠(わな)
「築地と豊洲の覇権争いの激化を、ギリシャ史実に基づき「ツキジデスの罠(わな)」という」
もう3年近く前になるか、東京出張の際に、移転後の築地界隈に宿をとったことをSNSに載せたところ、知人がこんな摩訶不思議なコメントをしてきた。
当時は築地市場移転の話題がニュースを賑わしてた。
勿論、冗談コメントで、「築地」と、ギリシャ将軍でもあり歴史家の「ツキジデス」のおやじギャグにすぎないのだが、正直、この「ツキジデスの罠」についてあまり知らなかったので、遅ればせながらいろいろ調べてみた。それで脱線しちゃって、仕事の作業が進まず。
でも、なかなか今後の米中の覇権争いについて示唆に富む内容だった。以下が読んだ本から抜書きした概要。
ツキジデスの罠
約2400年前、古代ギリシャ時代、陸上の軍事的覇権国家スパルタと、新たに台頭してきた海上交易の経済大国のアテネとの間で対立が生じ、二大都市同盟が戦う長年にわたる戦争(ペロポネソス戦争)が勃発。将軍として参戦もしたアテネのツキジデスが記した「戦記」で、急速に台頭する大国が既成の支配的な大国とライバル関係に発展する際に、それぞれの立場を巡って摩擦が起こり、当初はお互いに望まない直接的な抗争に及ぶことが不可避となるとしたことから、政治学者アリソンらがそのような緊張関係から衝突へ発展するリスクを「ツキジデスの罠」と命名。最近、米中の覇権争いの文脈でよく使われる。
アリソン著『米中戦争前夜』では、過去500年間の新旧勢力の覇権争い16事例のうち12は戦争に発展したが、20世紀初頭の英米関係や冷戦など4事例では、新旧勢力の相互譲歩により戦争を回避したとの分析。
いくつか過去の歴史からの教訓が指摘。そこらへんに、今後の米中摩擦の行方のヒントが隠されているのではないか?
ツキジデスの罠に陥らなかった(戦争を回避できた)4事例 (アリソン「米中戦争前夜」より)
・15世紀のスペイン vs ポルトガル
海洋国ポルトガルへのスペインの台頭(コロンブス支援による新大陸発見)、制海権争い・植民地獲得争いが軍事的衝突に発展する恐れ→ローマ教皇による調停で1494年トルデシリャス条約締結(教皇子午線で西半球を分割) ヒント: 高い権威を持つ存在は、対立解決の助けになる(国連がそうなれるか?)
・ドイツ vs イギリスとフランス(1990~)
EUでドイツが中核的存在に(↔ナチスドイツの過去)。「ドイツ的なヨーロッパ」でなく「ヨーロッパ的なドイツ」をもたらした。 ヒント: 国家より大きな機構に取り込む。
・アメリカ vs イギリス(20世紀初め)
セオドア・ルーズベルト大統領による西半球での覇権↔イギリスの覇権。イギリスによる自制(欧州で手がいっぱいであった)+喧嘩っ早いルーズベルト大統領であったがイギリスの安全保障を犯すという愚(ドイツがそれを犯した)は犯さなかった。
ヒント: 賢い国家指導者を擁する。タイミングを理解する(英ソールスベリー首相はイギリスは米の南北戦争に介入して国を分断させて力をそぐ機会を逸し、もはやその機会はないと理解)。文化的な共通点を見出す(マクミラン首相「アメリカ人は新しいローマ帝国であり、イギリス人は古代ギリシャ人のように彼らに物事を教えてやらなくてはいけない」)。
・ソ連 vs アメリカ
核兵器の存在から、冷戦の「発明」。戦争とは国際政治の延長。3つのノーに暗黙の裡に同意(核兵器の不使用、相手国兵士を直接かつ公然と殺さない、相手の影響圏への軍事不介入)。
ヒント: 核兵器を存在を前提とした交渉
戦争に至ってしまった他の12ケースも踏まえての教訓(アリソン)
✓経済的な相互依存
✓同盟が命取りとなるリスクの認識
✓国内情勢が重要であること
まあ、感染がおちついた暁には、感情的な感染の責任問題がどっとでてきそうだが、さて、国際情勢はどうなるんだろう。経済依存あり、ブロック化の危険の認識あり、国内情勢が衝突回避の方向かは微妙(バイデンでも)。果たして我々はツキジデスの罠を回避できるのであろうか。
我が国としては、米中両首脳を東京オリンピックにお呼びして、極上の江戸前寿司でおもてなしして、その仲をとりもてないだろうか。
「これ、ネタは今は豊洲です。築地デスの罠は今は昔」と。
たしか、築地場外市場はまだやっていたが。
(タイトルの写真は、築地で検索してでてきた写真を、Noteクリエーターのライブラリーから拝借。うまそうだなあ、これ)