京大理系数学2024を解く 大問2


2024年に実施された京都大学の理系の入試問題の数学を無理のない考え方で解く。

大問2


この問題は見た目では複素数の問題であるが、変数x,yを元に動くzの動く範囲を求めるというのが問題の核心であることから、軌跡・領域の問題に近いものとして捉えたい。
1変数の問題ならば、除外点に注意しつつ代入なりで片付くケースが多いが、この問題はそうはいかない。
2変数の場合、まず考えつくのは1つの変数を固定する方法、いわゆる予選決勝法などといわれる方法である。今回はそれをベースに解答を書くのを目指していきたい。
いざ、解答へ…と行きたいところではあるのだが、複素数で表された条件のままでは問題の全体像が少し曖昧なのでここは一旦、x,yをそれぞれa+biの形で表すことで問題のイメージを捉えよう。今回は面積を求めよという問題も付いていることから、xy平面に起こしてから、視覚的に捉えて幾何的に面積を求めるか、具体的な関数に直してから積分するかのいずれかが必要となるだろうという見通しを持てると方針が立ちやすい。
まず複素数x,yの条件は
$${|x| \leqq 2}$$ ー①
$${|y - (8+6i)| = 3}$$ ー②
実数a,b,c,dを用いてx,yを次のように表す。
x=a+bi
y=c+di
こうすることで複素数x,yに関する条件①,②は次のように書き換えられる。
$${a^2+b^2 \leqq 4}$$ ー③
$${(c-8)^2+(d-6)^2 = 9}$$ ー④
また、複素数平面上にzが描く図形はA(a,b)とB(c,d)の中点が描く図形と一致する。
これを元にA,Bの存在範囲をXY平面(複素数x,yと混同することを避けるために大文字とする。)に図示すると以下のようになる。

こうして問題のイメージが掴めたところで本格的に1変数を固定して問題を解いていく。
ところが、XY平面に起こしたことで4変数になったのではないか?と思うかもしれないが、そこは問題ない。元の変数がx,yであったことを考えると変数を固定する時、aとbまたはcとdの2つを同時に固定することになるし、何しろAまたは Bのどちらかを固定するのだから、あまり問題はない。
またここでzについてもXY平面に直すために、Z(s,t)としておく。すると s=(a+c)/2 , t=(b+d)/2 となる。
ここでAとBのどちらを固定するかだが、これは両方試してみて上手くいきそうな方を選んだ方が良いと思う。ある程度、この種の問題を解いた経験を頼りになんとなく上手くいきそうな方を試してみて、ダメならもう一方で試す。このくらいでも別に良いだろう。
今回はBを固定した方が分かりやすいのでBを固定する。(つまりcとdは一旦定数とみなして解き進める。)
この時、最終的に必要なs,tと定数c,dは残しておきたいので、a,bを消す方針で解き進めなければならない。そのために先ほど示したs,tの式を次のように変形する。
a=2s-c
b=2t-d
これらを③に代入すると、
$${(2s-c)^2+(2t-d)^2 \leqq 4}$$
両辺を4で割ることで
$${(s-c/2)^2+(t-d/2)^2 \leqq 1}$$ ー(*)
となり、(*)からz(s,t)は中心を(c/2,d/2)とする半径1の円の内部とその周上を動くということがわかる。
次に(c/2,d/2)がどのような軌跡を描くのかを調べる。
それについては④の両辺を4で割ってみると
$${(c/2-4)^2+(d/2-3)^2 = 9/4}$$ 
(ここでは、まだ使われていない式(今回は④)が使えないかと考えてみるとうまくいく)
となり円の中心(c/2,d/2)は(4,3)を中心とする、半径3/2の円を描く。
故にzの動く範囲は次のようになる。

面積に関しては幾何的に求めると
$${((5/2)^2-(1/2)^2) \pi =6\pi}$$となり、これで解答が完成となる。

ここからはあらゆる解き方について考えていきたい。ここまで解いてきて分かる通り、1文字固定で解くということを念頭に置いていれば、①複素数のまま処理する②極形式を使うといった方法でも実は解答を作ることができる。しかし、図でのイメージがないと混乱してミスを起こす可能性が十分あることには気をつけてほしい。
まず①複素数のままの解答だと次のようになる

打つのが面倒なので写真です。

先ほどの解答と流れはほとんど同じですが、いきなりこの解答を書くのは少しハードルが高いと思います。簡潔ではあるので書けるなら推奨したいところではありますが。
続いて②極形式を使った解答だが、これを真っ先に考えた人は少ないのではないか?と思う。というのも、極形式が有利なのはド・モアブルの定理が絡む時が多いが、今回はどう見ても使えそうには思えない。また、yの方の条件式には(8+6i)という複素数がくっついていて、yを極形式に置いたとしたらそれとセットで処理を求められることが予想されるからだ。僕自身、この記事を書くにあたって最初は見た目でこの解法は排除していたのだが、試しにやってみると案外上手くいった。

これにて大問2については終わりとする。
最後に謎に極形式を使っただけの意味のない解答もここで供養しておく。

大問3へ続く。

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