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「廃用症候群による摂食嚥下障害:STの継続支援がもたらす改善事例」

廃用症候群による摂食嚥下障害患者に対し、
多職種協働と継続支援が有効であった一例

著者、雑誌名、公開年
大嶋晶子、臨床栄養、2023年

  • 症例概要とSTの役割
    手術後の廃用症候群により重度の摂食嚥下障害が発症した80代男性の症例に対し、ST(言語聴覚士)はリハビリを通じて摂食嚥下機能の回復に貢献した。患者は僧帽弁置換術後、誤嚥性肺炎の影響で気管切開と経腸栄養管理を要し、当初は経口摂取が困難な状態であった。

  • STの嚥下機能評価と直接訓練の導入
    STは、嚥下機能評価を実施し、喉頭挙上と食道入口部開大の低下が原因で誤嚥リスクが高いことを確認。嚥下評価に基づき、嚥下筋の強化や適切な食形態選択のためのVF(嚥下造影)やエンゲリードと中間とろみによる直接訓練を開始した。

  • 多職種連携による摂食支援
    STは管理栄養士と協力し、患者の嚥下能力に適した食事形態と栄養補助食品(ONS)を選定し、栄養状態を維持するサポートを行った。活動量の増加に対応して食事量や栄養量の調整を行い、患者が安全に経口摂取へ移行できるよう支援した。

  • 自宅復帰と退院後の継続支援
    STは退院に向けた嚥下機能の最終評価を行い、家族と共に訓練内容を共有。退院後も嚥下機能外来で定期的にフォローを続けることで、経口摂取の安定とQOL(生活の質)向上を維持し、患者と家族の在宅療養への不安を軽減した。

  • 本症例の示唆
    本症例は、廃用症候群に伴う摂食嚥下障害へのSTの積極的関与が、嚥下機能の改善と在宅復帰を実現するうえで重要であることを示しており、特に継続的な支援の有用性を明らかにした。

まとめと感想
本報告にはSTの間接訓練(頸部可動域訓練、頭部挙上訓練、開口訓練)が行われていたとのことでしたが、それ以外にもPTによる歩行訓練が行われていたようでした。私見ですが、嚥下障害の改善には運動機能や体性感覚が関わっていると思っています。そのような観点で、STだけでなくPTやOTが介入することは非常に有効的であったのではないかと考えます。
また、退院後も継続して患者さんに関わることはとても重要と思います。実際に取り組むのはなかなかハードルが高いかもしれませんが、退院時に自主訓練プログラムを作成することくらいであれば今の自分にも出来ることだと思いますので、これから力を入れていきたいと思いました。在宅でのフォローに興味があるのでこれからも学んでいきたいと思っています。
そして、「がんばるアイス」というオリジナルの栄養補助食品を制作したという点に、患者さんへの強い想いが感じられ、是非参考にしたいと思いました。「がんばるアイス」とはアップリード、エネクイック、ホ イップクリームを撹絆して冷凍した物とのことで、栄養だけでなく、味覚や冷覚を利用した嚥下反射惹起への工夫もされており面白いアイデアだと感じました。

今回は参考になった報告をまとめてみました。今後もこのような投稿を通じて、皆さんに、できるだけ簡単に紹介していきたいと思います。

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