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ケス

言わずと知れたイギリス映画の名画。監督は巨匠のケン・ローチ。
 デザイナーのagnes b.が「好きな映画」と推し活し(そのおかげで日本でも公開されるようになりました)、スミスのモリッシーが「困難にぶち当たるといつも思い出す映画」と言い、オアシスのノエルギャラガーも影響を受けたと公言しています。
 マンチェスター(モリッシー、ノエルギャラガーの出身地)やリバプール(ビートルズ)などロックミュージックとサッカーの聖地では、「炭鉱で働くか、ミュージシャンかサッカー選手になるしか生活する道がない」と若者は言われるみたいですね。
 まさにこの映画の主人公の少年キャスパーは大人たちからそんな風にプレッシャーをかけられている、ノーフューチャーな状況にいます。
 キャスパーは母親と炭鉱で働く兄との三人暮らし。早朝から新聞配達のアルバイトをして、何とかその日暮らしをしています。母親も兄も働いてはいますが、生活は苦しい。週末には母親はいい年をして、恋人(冴えないおじさん)とパブ(お酒を飲むテーブル付きのライブハウス)で酒浸り。兄も同じパブで仲間とはしゃぎ、女の子がどうのこうのというのだけが楽しみ。老若男女同じパブというのがローカルです。でもイギリスではこういうところからビートルズやらローリングストーンズやらオアシスやらブラーやらが生まれたようですね。
 キャスパーは学校でも散々です。貧しくて親が買ってくれないのに体育の先生に体操着がないといじめられ(親が買ってくれない)、同級生からいじめられ、校長から鞭で打たれます(イギリスは昔、馬を叩く鞭で子どもの手を叩く体罰が流行していました。スミスの「headmaster ritual (校長のしきたり)」の歌詞にもあります)    

 そんな主人公のキャスパーは偶然見つけたハヤブサ(の一種、ケストレル)、「ケス」を飼育します。キャスパーの「ケス!」と叫ぶ声、そして初飛行、その感動を教室で語るシーンは感動的です。そしてそんなキャスパーの生き生きとしたプレゼンを引き出す国語教師も登場します。
 きっと動物を飼ったことがある人やアニマルセラピーに従事している人などはキャスパーが言ったことに感銘を受けるはず。
 「ケスは決して飼い慣らされない。対等で気高い」。
 キャスパーは唯一味方になってくれる国語教師にケスの飼育を見せ、ケスの気高さを語ります。
 私は仕事柄、この教師みたいに寄り添えたら、いいセラピストになれるんだろうな、と思うことがあります。
 是枝裕和監督がケン・ローチにインタビューしている記事を読んだことがありますが、子どもの貧困とかそういうテーマでは共通点があるかもしれません。でもイギリスの郊外の緑の何とも言えない物悲しい美しさは、日本映画にはないもののような気がします。
 映画の風景に馴染むような主張の少ない、でもちょっとお洒落でエスプリの利いた洋服、を目指したagnes b.が好きになるのもわかるような気がします。わかってないかもしれませんが、、、

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