ナゾを解くトレーニング
僕はかれこれ3分、書店の壁を睨みつけている。
書店のメインの商品である書籍たちには、完全に背を向けている。
「書店壁向き3分」は体感時間が長い。子供向けの本も充実している店舗だからか、幸せそうな家族がワイワイと背後を通過したりもする中、自分はただ棒立ちを続ける。
後ろを通る人たちの邪魔にならないよう、自然と徐々に壁と自分との距離を詰めるため、まるでボクシングの試合開始直前のガン飛ばしのようになっている。
東大ナゾトレから出題された問題が、ポスターに印刷され、壁に貼り付けてあるのだ。
正解は書いていない。店員さんに答えを告げ、そこで正解ならステッカーがもらえるシステムだからだ。
ステッカーが欲しいとか、東大系クイズ番組を毎週見ている、というわけではない。純粋に目の前の謎を解きたいだけだ。
分からない。
脳に酸素を、とマスクの中で深呼吸しながら、問題の一言一句を何度も見直し、解釈の角度を少しずつ曲げながら考えていく。
・・・あっそうか、そうか、そういうことか!
目の前が壁で良かった。マスクをしていても、目は開き、眉は上がり、「答えが分かった人の顔」以外の何者でもない。
解き始める前からずっと持ち続けていた会計前の書籍のバーコード面を店員さん側へクルリとひるがえし、晴れやかな気分で待ち人数ゼロのレジへ向かった。
「これ(書籍)、お願いします。あと・・・あそこのポスターの、」
「すいません、なんでしょうか?」
焦るな焦るな。店員さんは自分の声が小さすぎて聞き取れないようだった。
「東大ナゾトレのー、ステッカーってー、まだー、ありますかー?」
アクリル板の隙間から耳を出す店員さんに向けて、少し大きな声を出す。
「ああ、はい、ありますよ。」
店員さんは間髪入れず背後にあるケースからステッカー1枚を取り出す。
あの、まだ正解してないのに。ここで不正解だったら気まずすぎるのに。
「えっとー、答えはー、○○・・・あっこれ答えって大声で言っちゃいけないですよね。」
周囲を見渡し苦い顔をする自分に店員さんは笑って両手でステッカーを差し出してくれた。
これは5月のツイート。自分は今回初めて見つけて参戦したが、締切日を設けつつ、何度もシリーズ化でもしているのだろうか。
限定ステッカーがもらえるシステム上、問題が描かれている「店内掲示のポスター」そのものをインターネットに映せないジレンマも、なんだか面白い。
ステッカーのゲット報告はしていても、ちゃんと加工している方をお見かけしたので自分も。
非常に楽しい3分だった。
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