見出し画像

プレスリリース分析 三菱電機の不祥事

6月29日、三菱電機の長崎製作所で製作した鉄道向け空調機器で、出荷前に必要な検査を怠ったり架空のデータを記入するなどの不正な行為が35年以上にわたり、行われていたことが判明しました。

6/29 毎日新聞 三菱電機で不正検査 鉄道向け空調機器、35年以上https://news.yahoo.co.jp/articles/fdb76e8fdb5b9b4975866ca977a5766a666f2880

さまざまなメディアが報道を行うなか、三菱電機は同日、下記のように事実関係を認め、調査を行っている旨のコメントを出しています。

6/29 三菱電機 本日の一部報道についてhttps://www.mitsubishielectric.co.jp/notice/2021/pug/pug.pdf

企業が報道を受けて、何らかのコメントを出す場合、一度事実関係についてある程度公表したうえで、改めて詳細を出す旨の通知を行うことはよくあることです。しかし、三菱電機の場合は、その後の報道で次のような事実が判明します。

6/30 産経新聞 三菱電機不正、鉄道インフラ輸出に影響もhttps://news.yahoo.co.jp/articles/317719c0916b1990b3d2b437b8d88fe32bf6d7ad

『鉄道会社によっては今月25日に三菱電機側から第一報を受けたが、国交省には問題が明るみに出るまで報告はなかったという。「(三菱電機側から)安全上問題はないと言われただけで、それがなぜ分かるのかは確認できていない」と話す。』

『一方、工業製品の安全性について日本工業規格(JIS)を所管する経済産業省は 25日付で三菱電機から報告を受け、原因の調査などを指示した。担当者は「現時点で事実関係や調査結果などが出ておらず、特に対応などを話すタイミングにない」とするにとどめ、事実関係の把握を急ぐ考えだ。』

つまりは、6月29日の報道以前に、すでにユーザーである鉄道会社、JISを所管する経済産業省には事実が伝えられていたのです。この時点で、鉄道会社へ事態を伝えていることや、経産省に報告を行った事実をプレスリリースで公表していれば、かなり傷はまだ浅くて済んだといえます。

そして、7月2日に下記のようなプレスリリースが出され、一連の経緯や今後の対応の詳細をようやく公表しました。

7/2 三菱電機 当社の品質風土改革に向けた取り組みについて
https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2021/0702-a.html

さらにこのリリースを出した同日、杉山社長が会見を開き、辞意を表明します。この際、杉山社長は次のように発言しました。

『6 月 29 日開催の第 150 回定時株主総会で当該問題を株主の皆さまへご説明しなかった理由について、「情報不足の中で公表することは望ましくないとの執行役の判断を、株主総会の前日に取締役会に諮り了承を得たので、公表しなかった」』

要は公表の遅れに、株主総会の開催が影響したのではないか、との指摘に対して、上記の発言をしたのですが、翌7月3日に下記のようなリリースが出されます。

7/3  三菱電 7 月 2 日の記者会見における弊社杉山の発言内容の訂正について
https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2021/0703.pdf

上記の発言について、同社は、『6 月 28 日に取締役会は開催されておらず、本件についても協議しておりません。情報不足の中でご説明することは望ましくないということを取締役には個別に説明した上で、執行役の判断で公表を控えたことをお伝えしたものです。』と修正するリリースを出したのです。

もちろん、事実が違うのであれば、修正のリリースを出すのは当然なのですが、これらのリリースから透けて見えるのは、公表が後手後手になっていることと、あまり事実関係は問題把握をしないまま、不十分な状態で情報発信をしている点です。

米国でも納入した空調装置について、追加調査が求めらているようです。 

7/10 時事通信 NY交通局、追加情報要求 地下鉄が空調使用 三菱電機不正https://news.yahoo.co.jp/articles/15c067ee6888747e1cf46151762e61fbac421ec6

日本では官民挙げて、インフラ輸出を進めてきただけに、対応を誤ると三菱電機だけでなく、日本の今後の海外戦略全体にも影響を与えるので、きちんとした情報公開が求められます。

こうした問題が起きるたびに、読んでおきたい本が畑村洋太郎先生の著書。