見出し画像

書評 腐敗と格差の中国史 岡本隆司

新型コロナウイルスをめぐり、中国政府の対応や動向がクローズアップされる最中に読んだ1冊。著者の中国に関する書は以前にも読んだが、今回の書においても、とかく「3千年の歴史」などと称されるように、「壮大」なスケールで語られ、ともすれば「抽象的」な形になりがちな中国の歴史を、各王朝に合わせて、精緻に分析しているのが特徴で、今回は「腐敗」「格差」をキーワードに、隋の科挙の時代から、現在の中国共産党政権までの流れをたどっている。

いまにつながる官僚制の確立や、隋の時代に導入された「科挙」が、熾烈な争いを促し、貴族政はなくなったものの、「士」「庶」と呼ばれる身分の枠組みが根強く存在するようになった過程が、本書では浮き彫りにされている。近代になって、孫文や蒋介石、毛沢東などが出てきて、現在の中国が形成される過程に至っても、格差の流れが厳然と続いていることがわかる。

新型コロナウイルㇲの問題でも、最近はインターネット世論の高まりで、政府がその動向に敏感になっていることがうかがわれるが、今後、こうした世論の「ソフトパワー」が、これまで続いてきた「腐敗」「格差」の流れに、少しずつではあるが、楔を打つことになるのか。そんなことにも頭をめぐらす1冊だった。

#中国史 #岡本隆司 #書評