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書評 喧嘩両成敗の誕生 清水克行

喧嘩両成敗といえば、個人的にはいかにも「和を以て貴しとなす」と並んで、昔から調和に重きを置く日本的な考え方だと感じているが、実際にその歴史がどこから来るかと言われれば、あまり知ることはなかった。

同書では、その源流を室町時代に求める。室町時代というと、戦国時代や江戸時代などに比べると、あまり注目されない時代だが、最近は呉座勇一の「応仁の乱」がベストセラー化したことで、スポットを浴びるようになった。応仁の乱の時期は、誰が勝者で誰が敗者かわからない、端的に言うと白黒が付かない時代だったというのが、個人的な見方なのだが、今回「喧嘩両成敗」では、当時の古文書を丹念になどりながら、その考え方のルーツをたどっている。同書を読んでみると、当時は大名、庶民が入り乱れて、それぞれが生活をしていくなかで、さまざまな秩序やルールができ上っていく過程が見えてくる。なかには、「祝術」的なことでいわゆる罰を下していることまであった事実も出てくる。

そのようななかで、「喧嘩両成敗」という考え方は、大なり小なりの紛争が起きる過程で、徐々に出てきてその後の歴史で定着した流れがわかる。エピローグでは、近年大阪で起きた自治会をめぐるトラブルの裁判に関するエピソードが載せられ、その内容が「喧嘩両成敗」的な内容であると取り上げている。制度や時代が変わっても、「喧嘩両成敗」という考え方が何らかの形で、日本人の歴史のなかに刻まれていることを感じさせる1冊だった。

#書評 #歴史 #喧嘩両成敗