書評 0円で生きる 鶴見済
著者は90年代に「完全自殺マニュアル」や「人格改造マニュアル」といった世間に衝撃を与える書籍を放った。その時にこれらの本やメディアでよく語っていたのが、これらの選択肢を出すことで、むしろ生きやすくするといったコンセプトで書いた旨のことだった。今回の同書は、17年の初版だが「お金に依存しない」生き方がコンセプトだ。
不用品放出サイトやフリーマーケットの利用、飲食店などから出る売れ残りの利用、無料の公共サービスの利用、また、野菜を自分で育てたり、採取したりする方法までが、著者が過去に出した本と同じような編集スタイルでマニュアル的にまとめられている。そして、センテンスの最後には、著者のお金に依存しない生き方や「脱資本主義的」な考え方がまとめられている。
エコ生活やシェアリングエコノミーなどと言われているものの、実態としてはどこかで資本主義に依存せざるを得ないのが、今の世の中である。そのことはおそらく著者自身が百も承知のことだろう。とはいえ、弊害が出ている点も否めない。個人として、こうした生き方を究極まで追求するも決して悪くないかもしれない。一番よくないのは、資本主義を否定し、上野千鶴子や内田樹当たりの世代が言い出す「全員で貧しくなろう」的な発想だ。個人として「0円生活」を実践するには、これからの時代1つの生き方の選択肢として良いかもしれない。