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『パリ13区』、試写会にて

わたしも、あなたも、途方もなく孤独だということ。


このまえ『パリ13区』という映画の試写会に参加した。

開演前、ブーッと音が鳴る、予告もなく始まるそれに胸が高鳴る久々の体験。

会場に座っている全員が仕事や勉強や家事を終えて、1人きりこの映画を見に来た。そして映画が終わればまたそれぞれの日常に戻る。考えてみると、意外にも珍しい時間だ。


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映画は、かなり乱雑な内容だった。
起承転結は特になく、セックスの描写がふんだんに盛り込まれている。甘い言葉や息を呑むような映像美とも遠い。登場人物も決して立派とは言えない。

「つながるのは簡単なのに、愛し合うのはむずかしい」

映画のポスターにも書かれているこのコピーが本当に的を得ていて、上映中何度も頭をよぎった。


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上映後、試写会アンケートに「恋をしたくなった?」という設問があり、もちろんyesを丸で囲む。
それは多分、あなたと私は別の人間だということ。あなたは私にはなれないし、私も自分からは逃れられないということ。だから、自分の言いたいことを言えばいいし、泣きたいときに泣いたり。会いたくない時は会わなくていいんだよな。空気を読んだ発言のつけが自分に回ってくるように、問題発言の責任も自分で取ればいいんだから。わかっていれば強くなれる自己中のまじないを主人公のエミリーから教わって、うまくいくような気がしているから。


帰り際、地下鉄の暗いホームにこれでもかとひしめき合っていたスーツ姿のおじさん達。ごめんなさい、正直気が滅入ったけどモノクロ映画の延長線上のようだとポジティブ変換をして帰路についた。


親友や恋人、家族だってわたしではない。わたしは独りでひとりで1人。
今日も明日も、死ぬまでひとりだということを知っていることの豊かさ。
知っていながら、私は今日も母のごはんを美味しく平らげ、1日の出来事を話す。職場の人の新たな一面を見た、などと。そして家族の1日の出来事を聞いて、声を出して笑った。試写会場にいた彼らも同じように食卓についているのだろうか、と想像する。

孤独の豊かさと強さを考えて悦に入りながら眠る夜が来るなんて、変な気分だった。


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ぜひ、一人きりで見に行ってほしいなと思う。



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