スクワットで両膝に違和感がある症例
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
スクワットをすると、立ち上がり途中で両膝蓋骨周囲のやや奥で違和感を感じる。感じとしては重い。
症状は10回ほどで出現してくる。また、コキコキ音がする。
また、座位で膝関節自動伸展すると膝関節外側に引っかかり感がある。
Q) 原因は?
A) スクワットでは違和感、コキコキ音から関節のズレが生じている可能性がある。
Q) 違和感とズレの関係は?
A) 関節がズレると、そのズレを周辺組織が感知して違和感が起こる。
重い感じから感知している組織は筋、関節包が考えられる。
Q) 10回のスクワットで出現することから言えることは?
A) 筋疲労と関係する。
Q) それは?
A) スクワット当初は膝関節周囲筋が均等?に使用されているが、回数を重ねる内に低下筋の働きが鈍り、普段使用している筋が優位になりアライメントが変わる。
Q) 座位での膝関節伸展途中の引っかかりは?
A) 部位から腸脛靱帯が疑われる。
腸脛靱帯は膝関節屈曲30度ほどで外側上顆に接触する。
症例の引っかかりが出現する角度に近い。
原因は下腿のアライメント、あるいは腸脛靱帯付着筋の萎縮が考えられる。
ここから、筋の優位性や関節のズレという、スクワットとの共通性が見出せる。
Q) 膝関節のズレはスクワットの現象から筋の優位性としたが、どの筋か?
A) このままでは範囲が広くて特定が難しい。そこで、考える組織の範囲を狭める。
Q) どのようにして?
A) スクワットの回数を重ねると症状が起こり、それは優位筋からの影響とすれば、スクワット前と後で下腿のアライメントが変わる。
その変化から筋を推測し、触診等で確認する。
Q) 方法は?
A) 下腿の動きは前後と回旋である。
① 下腿の前後
下腿の前後移動は、膝蓋骨下端と脛骨粗面の矢状面の位置関係でわかる。
触診の結果、通常よりもやや後方に脛骨が位置していた。
② 下腿の回旋
下腿の外旋はやや大きい。
下腿の内旋は右が少ない。
スクワットを10回実施し、症状が出現した時の状態
① 下腿の前後に変化は無かった。
② 下腿の回旋
○ 下腿の外旋は減少し、右で減少の程度が大きい
○ 下腿の内旋は右で拡大
Q) この結果から言えることは?
A) 下腿内旋筋が優位になる。
Q) なぜ、そうなるのか?
A) 下腿内旋筋はいずれも膝関節屈曲作用である。
そこから、優位筋は膝関節伸展作用ではなく、その動作時に膝関節安定化のために働いていることが考えられる。
Q) なぜ、スクワットの立ち上がりで違和感が出現するのか?
A) スクワットで最も使用される筋は大腿四頭筋である。
立ち上がりは大腿四頭筋の求心性収縮である。
遠心性より求心性の方がパワーが必要なので、その分、膝関節安定に筋が使用される。
Q) 優位な筋は何筋か?
A) 大腿四頭筋に対抗して膝関節を安定させ、下腿を内旋させる筋は内側ハムストである。
Q) 評価では?
A) 内側ハムストの肥大が視診と触診で確認された。
Q) なぜ、内側ハムストが優位なのか?
A) 他の膝関節安定化筋が低下しているからである。
Q) 何筋か?
A) 内外側広筋は内外側膝蓋支帯に付着して、膝関節内外側の安定化に関わる。
また、膝関節外側は、大腿二頭筋、外側・中間広筋が安定化に働く。
Q) 評価では?
A) 内側広筋斜頭の萎縮が確認された。
Q) アプローチは?
A) 内側広筋斜頭の強化である。
また、内側ハムストが優位なため、その作用と下腿回旋で拮抗し、膝関節外側の安定化筋である大腿二頭筋も強化の対象とした。
Q) 方法は?
A) 以下の方法を実施した。
① 内側広筋斜頭
内側広筋斜頭は大内転筋とつながる。よって、大内転筋作用である股関節伸展・内転を膝関節伸展時に行なわせた。
この運動の時、症例の足関節は底屈位であった。
底屈作用の下腿三頭筋内側頭は内側ハムストとつながるので、これでは内側ハムストを促通してしまう。
そこで、足関節背屈位で行なうよう指示した。
その時に症例は、この運動はやりにくいと言った。
そこから、膝関節伸展時の膝関節安定化の内側ハムスト優位性を思わせた。
② 大腿二頭筋
下腿外旋位で膝関節屈曲を、床に踵を押しつけながら等尺性に行なった。
各運動は休みを含めて5分間実施した。
Q) 結果は?
A) スクワットの違和感は大きく減少した。
座位で膝関節伸展の引っかかりも減少した。
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