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起き上がりについて

こんにちは、理学療法士のおかむーです。

今回は、起き上がりについてお話しします。

高齢者の方の術後、片麻痺、内科や外科的疾患で長期臥床が強いられたときなど、起き上がりが困難になる場合があります。

起き上がりは、上肢支持、体幹の屈曲・側屈・回旋運動、下肢によるカウンターウェイトが用いられます。

ここで重要になるのが体幹です。

身体に問題がない高齢者の方は、起き上がる際、腹部筋と股関節屈曲筋を等尺性に収縮させて、両下肢を挙上させ“くの字”の状態から勢いをつけて、背臥位から起き上がる話を聞きます。

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勢いをつけるのは、体幹を持ち上げる力が弱いからです。

また、側臥位から起きるための体幹の側屈・回旋の可動域が低下しているためだと考えます。

特に、側屈の可動域は重要です。

側屈の可動域がないと起き上がるとき、体幹の体重を支持する骨盤から体幹の重心点までの距離が遠くなります。

側臥位からの起き上がり


体幹の側屈が可能な方に比べて、体幹重心点までの距離が遠くなるので、回転モーメントが大きくなり、起き上がる際の上肢支持が増えます。

なので、上肢に力がなければ起き上がれません。

臨床でも、体幹の可動域では、側屈の可動域制限がある方を多く見かけます。

当然、可動域がなければ、側屈させる筋を使う必要がなくなるので筋力も低下します。

ここで、側屈の可動域を教書で見ると、胸・腰椎がほぼ同等な可動範囲で動きます。

また、各関節の可動域は、それほど大きくありません。

Donald A.Neumann 原著 嶋田 智明 他監訳:筋骨格系のキネシオロジー 原著第2版 より引用


ここで不思議なのが、胸・腰椎では、側屈より回旋の方が各椎間関節の可動域が少ないのに、側屈の可動域に制限が起こることです。。

これは、回旋を押さえる、あるいは誘導する組織より、側屈の組織の方が多く、高齢化による組織の退行変性が影響しているものと考えます。

そして、普段の生活で、体幹の側屈を使用する回数が回旋より少ないことが考えられます。

この側屈の低下は、呼吸器の問題にも絡んできます。

いずれにせよ、側屈の可動域と筋力を上げることが重要かと。

側屈の可動域については、徒手では難しいので、側臥位からクッションを入れることをお勧めします。

写真はイメージ


また、体幹を起こすためには、そこで骨盤が動かないように固定する必要があります。

それには、下肢によるカウンターウェイトが骨盤固定の役割を担います。

必要な筋ですが、例を挙げると

○左側を下にした側臥位から起きる場合

右体幹側屈筋が働くので、その筋の作用で右骨盤は挙上します。

すると、右股関節は骨盤に対して、内転位になります。

側臥位からの起き上がり


体幹を側屈して、体幹をベッドから持ち上げたいのに、骨盤が挙上しては持ち上がりません。

そこで、骨盤の挙上を押さえるために、股関節では外転の力が必要になります。

下側にある左股関節は内転筋です。

側臥位からの起き上がり


ただし、下肢より体幹が重いので、股関節外転筋が強くても、体幹の重さに勝てません。

そこで、右の膝関節を伸展させて、下肢の重心点の位置を骨盤から遠ざけ、回転モーメントを大きくして体幹に対抗します。

この膝関節の伸展の程度は、起き上がりに使用する上肢の力で変わります。

特に、側臥位からon elbowまでが大変な時期です。 

理由は、骨盤から体幹の重心点までの距離が最も遠いからです。

ところで、回旋の要素はどうなの?と思われるかも知れませんが
側臥位から体幹を回旋させても起きれません。

側臥位で体幹をベッドから浮かせるのは側屈です。

では、体幹の回旋は、何のためにあるか?と言うと
起きる戦略を決めるためにあります。

体幹や上肢に力がない場合、両上肢を使用するために、体幹の回旋を大きくして両上肢も使える体制をとります。

また、on elbow~on handで体幹の回旋が大きければ、両上肢の使用、あるいは、そこから背筋や伸展の可動域を利用できます。

逆に、体幹の回旋が少ない場合(半側臥位様)では、腹部筋や体幹の屈曲可動域が利用できます。

よって、側臥位から起き上がるとき、体幹の回旋の状態を見ることで、その方の優位性や問題が間接的にわかります。

まとめ

  • 側臥位からの起き上がりでは、体幹の側屈可動域と筋力が必要になる。

  • 下肢の対応は、体幹の作用筋による骨盤の動く方向から、それを押さえる股関節作用筋がわかる。

  • 体幹の回旋の状態から、体幹の何を使用するか読み取れ、アプローチのヒントになる。

今までを踏まえて、実際の症例で見ると

○起き上がり困難な右片麻痺の方

高齢の右片麻痺の方。
側臥位~on elbowは全介助、on elbow~on handは部分介助
まず、on elbow~on handの自立に向けて。

体幹の右側屈の可動域はあるが、左足をプラットフォームの下に入れて、左股関節内転筋を利用している。
また、麻痺側である右下肢は屈曲している。

ここから、起き上がれない原因として

・右下肢麻痺の筋力低下、あるいはコントロ-ルがうまく行えない。
・麻痺側である右体幹側屈筋の低下
・非麻痺側の上肢伸展筋の低下
・非麻痺側の左下肢は身体に対応する十分な力と能力がある。
※十分な力と判断したのは、力がなければ使用しないからです。

が考えられます。

ここで、写真の状態の時、右下肢は屈曲してます。

起き上がりの時、この現象が起きていると、下肢の屈筋の緊張が高いことになります。

これは、起き上がるための右体幹側屈筋の収縮を促そうとしていると捉えられます。

また、症例は高齢の女性で、腕力はそれほどないように見えます。

以上を踏まえると、起き上がりができない原因は、右体幹側屈筋の低下と推論されます。
これは、側臥位~on elbowが全介助からも可能性が高いです。

あとは、評価で、その推論が正しいか調べ、引っかかれば、そこにアプローチします。

なので、(人にもよりますが)アプローチは起き上がり練習でなくてもよいと考えます。


最後までお読み頂きましてありがとうございます。







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