しゃがみ込み途中で膝痛が生じる症例(1)
以下に記す症例について、見方、知識の使い方、考え方の流れが参考になれば幸いです。
情報)
若い方である。
しゃがみ込み途中で右膝内側に痛みが出現する。
Q) 原因は?
A) しゃがみ込みで右膝が内側に入り、左に比べて外反位である。
また、痛みの部位は膝蓋大腿関節内側から膝関節内側周囲を指していた。
そこから、そこに付着する組織である内側膝蓋支帯などの伸張が考えられる。
また、内側膝蓋支帯した場合、内側広筋に付着する。
すると、ハムストリングスの緊張で脛骨後方偏位による上記組織の伸張も加わっている可能性があるので、脛骨偏位を調べた。
脛骨は前方偏位していた。
Q) これは?
A) 大腿四頭筋の緊張が高い可能性がある。
これにより、大腿四頭筋内側に付着する内側膝蓋支帯はより伸張される。
Q) 大腿四頭筋の緊張が高い原因は?
A) 日常で大腿四頭筋が頻繁に使われるのは歩行である。
歩行周期のIC~LRで、膝関節のショックアブソーバーとして働く。
Q) 何故、右大腿四頭筋の活動が高いのか?
A) ショックアブソーバーとしての大腿四頭筋の活動は、対側の蹴りだしの強さと関係する。
左下肢の蹴りだしが強ければ、それを受け止める右大腿四頭筋の活動は高まる。
Q) 歩容は?
A) 蹴りだしはToe outで母趾に荷重されるので優位になる。
そこで、前額面の前面から足部の肢位を確認した。
すると、右が左に比べてToe outであった。
Q) それだと推論と違うが?
A) 歩行を前額面後方で見ると、蹴りだし時の足裏の見え方や蹴りだし後の足のスピードからも判断できる。
しかし、よくわからなかった。
ただ、立脚側の下腿外側傾斜が右で大きかった。
下腿外側傾斜は踵骨の外反からも起こる。
歩行の前額面後面からの踵骨の左右から外反が確認された。
踵骨の外反は内側縦アーチの低下で、ウインドラス機構や下腿三頭筋による距骨下関節内返し作用による足部剛性の低下の可能性を意味する。
これは蹴りだしに不利になる。
よって、右Toe outは蹴りだしよりも支持のためと考えることができる。
また、内側縦アーチ低下はしゃがみ込みで膝を内側に向かわせる。
Q) アプローチは?
A) 右内側縦アーチを高めて右蹴りだしを優位にさせることで、左蹴り出しを弱めて右LRでの大腿四頭筋活動を抑える。
また、右内側縦アーチを高めることで、しゃがみ込みの右膝内側移動を押さえる。
Q) 方法は?
A) タオルギャザーである。
強めの等尺性で3秒保持を5分間実施した。
Q) 結果は?
A) タオルギャザー後、室内を数往復歩いてもらい、右蹴りだしによる効果を引き出した。
その後の確認で、右脛骨の前方偏位は減っていた。
結果は、しゃがみ込みの右膝内側移動は減り、痛みは半分に下がった。
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